テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

「武豊線連続立体交差化事業」って、いったい誰のためにやるの?

JR東海は18日、愛知県大府市と同県武豊町を結ぶJR武豊線(19.3キロ)を2015年春に電化すると発表した。JR東海道線と同じ電車が使えるようになり、名古屋市への通勤・通学がより便利になるという。1987年にJR東海が発足して以来、旅客線の電化は初めて。
愛知の武豊線、15年春から電化 JR東海の旅客線で初asahi.com朝日新聞速報サイト)2010年3月18日付

おや、遂に武豊線にも架線が張られますか。JR東海ニュースリリースhttp://jr-central.co.jp/news/release/nws000490.html)と朝日新聞の記事を合わせて考えると、こういうことですか。

  • 大府駅武豊駅間 19.3kmに電車線路設備及び変電所を新設
  • 313系電車28両を新製し投入
  • 設備投資額約82億円(うち地上設備に約32億円、車両製造に約50億円)
  • 武豊線で使用しているキハ75系は主に高山線に転用
  • 電化により年間約2900トンの二酸化炭素を削減できる(従来比約57%、一般家庭の約540世帯分に相当する)
  • 電化により車両や運転士を柔軟に運用できるようになる(朝日新聞の記事より)

電化する理由は「効率化」ってところでしょうな。スピードアップを図る、どころか増発って話もないし。車両の動向とかに関しては、もうもりくち氏がブログの記事にしておおられていて、私が話すことなんか何にもない(武豊線電化と「最後の国鉄型車両」キハ40系の淘汰の始まり)。キハ40系は廃車、ではなくて売り飛ばし……だといいんですが。それよりも、中日新聞の記事に書いてあった一文が気になった。また長くなる話ですがどうかお付き合いの程を。

「JR武豊線鉄道高架化関連事業」って一体なんですか、半田市市街地整備課。

同県半田市が求める半田駅周辺の高架化関連は、今回は含まれず「市との関係もあり、別のプロジェクトになる」と説明した。
JR武豊線、2015年春までに電化へ中日新聞Webサイト2010年3月19日付社会面

高架化? 武豊線を? 朝日新聞の記事にはこんなことが。

地元の榊原純夫・半田市長は「環境面やスピードアップの面からも大変喜ばしい。高架化についても国や県、JR東海と協議していきたい」と歓迎している。
愛知の武豊線、15年春から電化 JR東海の旅客線で初asahi.com朝日新聞速報サイト)2010年3月18日付

半田市長は「高架化もして欲しい」、JR東海社長は「高架化は電化事業とは別問題」。この二人の発言には「温度差」を感じるんだけど。そもそも半田市長が何で「武豊線高架化事業」を言い出す? 気になって半田市公式サイト内を調べると、市街地整備課のところに「JR武豊線鉄道高架化関連事業に関すること」というページがあった。

  • 元は昭和63年に設置された「JR半田駅周辺整備検討委員会」
  • 平成13年、高架化が実現できるよう国道247号線、県道衣浦西港線、市道荒古線の道路整備事業に着手
  • 平成4年、国鉄清算事業団より高架化仮線敷設用地9筆、計5609.85平方キロメートルを取得

で、その後次々に研究会とか委員会とかが設置された、と。流れはだいたい分かった。では何でこんな計画を作成したのか?

特に、JR武豊線は、中心市街地の中央を分断していることから、先行して高架化したほうが、「JR半田駅前地区」と「名鉄知多半田駅前地区」との域域分断解消の効果が大きいと考えられています。これに併せて、空き家、空き店舗、空き地等の低未利用地が増えている「JR半田駅前地区」の基盤整備を実施することにより、東西の交流をスムーズにし、地域の魅力を引き出し、まちの活性化に繋げる効果が期待されています。
(「半田市の鉄道高架とまちづくり」から抜粋‐半田市公式サイトより)

なるほど、半田市中心市街地の分断を解消するための方法として、独自に計画したのですか。一応、名鉄知多半田駅周辺の整備事業も予定しているけど、JR半田駅前の立体高架化事業が先、というわけか。でも未だに県や国から「お墨付き」はもらえてない。だから半田市長が「国や県、JR東海とも協議していきたい」と言った、と。
ところが、調べていくうちに妙な話に突き当たった。

犬山市は「景観保護」優先、半田市は?

市街地整備課が「JR半田駅前のまちづくり」に関して、平成20年6月下旬から7月上旬にかけてアンケートを実施している。実はこのアンケート、半田市の全世帯に対してではなく、JR半田駅周辺地域に住む、あるいは商売等を営む世帯にしか実施していなかったのだ。配布数317通、回収したのはそのうち219通。ちなみに平成20年4月1日現在、住民基本台帳への登録がある世帯数は44721世帯。全世帯数から見れば1パーセントもない世帯からの意見。他の地域に住む人の意見はどうしたのですか、半田市市街地整備課。その上、調査結果は道路整備よりも、まちの活気や商店の少なさを不満点に挙げる人が多いことを示していた。しかしやろうとしていることは高架化による交通障害の排除。調査結果をまとめたPDFファイルを配布しているページへは以下のリンクから行けるので、是非とも一読して欲しい。
外部リンク:http://www.city.handa.lg.jp/contents/30040056.html
商店の少なさはともかく、町に活気を取り戻す方法は別に大規模な道路整備でなくても構わない。その好例が犬山市だ。過去に犬山駅の橋上駅化を行い、そして山車曳き回しの行われる市街地の一部道路について、電線等を地中に埋め込む大規模な工事を行った。でも市街地中心部についてはそれ以外の大規模な道路整備なんて何もしてないんです。現地に行けば分かることだけれど、本当に車が一台通れるかどうかという道路がそのままの姿で残っている。むしろ犬山市が進めているのは古い町並みの景観保護と観光客誘致のためのイベントの開催だ。昨年の「犬山城下町麦酒祭り」もその一環だった。市街地活性化を第一に考えるなら、道路整備よりも空き店舗をなくした方が手っ取り早いはずなのに。

布袋駅の橋上駅化及び立体交差化ですら全部で189億円かかるんですよ!

橋上駅化及び周辺道路との立体交差化事業、といえば布袋駅の事例がある。布袋駅を橋上駅化し、南側の国道155線バイパス上を含む6箇所の踏切を廃止して渋滞緩和を図るというものだ。この工事にかかる総事業費は189億円。地元負担額がいくらになるかは分からないが、たぶん相当額払っているとは思う。
外部リンク:鉄道高架に来月10月着工 名鉄布袋駅付近YOMIURI ONLINE「中部発:環境・生活」
半田市の場合、駅の南北に隣接する2箇所の踏切に加え、その北及びその南各一箇所の合わせて4箇所を高架化により廃止する計画を立てている。単純に計算は出来ないが、布袋駅のケースの2倍を越えることは間違いない。どうかすると総事業費400億……。旧カブトビール工場(赤レンガ工場)を買い取りながら財政難により改修すらできずにいる半田市が、市の単独事業として数百億円規模の負担を強いられそうなこの事業に手を付けられるはずなどない。だいいち、高架化及び複線化してもJR東海が運転本数を今よりも増やさなければ、地元へのメリットは何もない。建設負担金が市民に市の債務となってのしかかるだけだ。
この計画には3つの関係団体が絡んでいる。ところがそのうちの一つは活動停止、一つは駅周辺に住む住民等が作る「勉強会」、そしてもう一つ「半田連続立体交差事業促進期成同盟会」は、会長が半田市商工会議所会頭、メンバーは地区区長や地元の商店街組合理事長ら。半田市全域から意見を吸い上げる市民主体の協議団体がリストに入ってないんです。本当にないのかな? それでいてこの計画は行政主導。ああ、だめだこりゃ……とオチをつけたところで本日はお開き。
ああ、そういえば明日は丸石醸造創業320年大創業祭の開催日だったか。届いたチラシによれば、いつもの蔵開きよりはちょっと安く販売するようだ。で、天候は(以下略)。