テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

「谷村みすず」の登場は、「鉄道会社の萌えキャラ採用」に影響を与えるか?

先月、富士登山電車が快速運行を始めたと聞いて富士急行公式サイトを見たら、萌えキャラがトップページに登場していて驚いた。しかも見覚えのある絵柄だと思ったら、キャラクターデザインは宙花こよりである。「姫宮なな」や知多半島PRイメージキャラクターである「知多みるく」を送り出し、栗橋町商工会のイベント用に「栗橋みなみ」の書き下ろしイラストを提供したあの宙花こよりだ。

富士登山電車イメージキャラクターとして「富士登山電車客室乗務員 谷村みすず」を設定し、富士登山電車をPRしてまいります。
今後お知らせのポスター等への登場を予定しています。
富士登山電車イメージキャラクター「富士登山電車客室乗務員 谷村みすず」が登場!富士急行公式サイト「富士登山電車」のページより)

キャラクター設定を見て、富士急行はとんでもないキャラクターを登場させたな、と思った。今後の富士急行側の「使い方」次第では「萌えキャラブーム」に一石を投じるどころか、鉄道会社のイメージキャラクター選定に多大な影響を与えるかもしれない。

「谷村みすず」と「姫宮なな」の設定の違いは、「所属先」の「萌えキャラ」に対する考え方の違い。

彼女の「設定」を公式サイトから拾い出してみる。

  • 谷村みすずは「富士登山電車」の客室乗務員。
  • おしとやかで落ち着いた案内が好評である。
  • 趣味は登山とランニング。
  • 富士登山競争五合目コース完走の経験あり。山頂コースの完走を目指している。
  • 富士急行運転士を目指している小学生の従兄弟がいる。
  • 休日には同僚の「大月みーな」とショッピングを楽しむ。

これで年齢とスリーサイズの設定があれば完璧だ、と思ったことは遠くに放り投げておく。この設定の中で注目すべきは最初と最後。谷村みすずが「富士登山電車の客室乗務員」であることと、休日には「大月みーな」と共にショッピングを楽しんでいるという点だ。休日にはショッピングを楽しむほどの「友人」という「大月みーな」、実はトミーテックが発売を続けるフィギュアコレクションシリーズ、「鉄道むすめ」の第3弾に登場した富士急行駅務係「大月みーな」である*1

鉄道むすめシリーズに「駅務係/大月みーな」がいる富士急行株式会社の、富士登山電車イメージキャラクターとして「富士登山電車客室乗務員 谷村みすず」が同社WEBに登場しております。
(当ブログの筆者により中略)
紹介されているプロフィールにも「同僚の大月みーな…」との表記もあり、今後は鉄道むすめシリーズとの関連性も期待できそう?
〜「富士登山電車キャラクターは「鉄道むすめ/大月みーな」の同僚!?」(「鉄道むすめ」公式サイト「ニュース」より抜粋)

鉄道むすめ」シリーズには東武鉄道駅務係の「栗橋みなみ」、そして東武スペーシア販売員の「春日部しあ」が既に登場していた*2。一方で姫宮ななは「東武鉄道お客様センターの係員」であり、鉄道業務からは少し距離を置いた部署にいる。職場が違うこの二人が出会う可能性は低いだろう。ところが姫宮ななは「鉄道むすめ」シリーズにゲストキャラとして登場した。ならば双方の公式サイト上で「最近栗橋みなみや春日部しあとメールのやり取りをするようになった」と書き加えてもよさそうなものだった。それが未だにない。思うに、「そこまで『鉄道むすめ』シリーズと関わらなくてもいいだろう」と、東武鉄道及び東武商事の担当部署が判断したのではないだろうか。つまり、「姫宮なな」は「お客様センターの存在をPRするためのもの」であって、それ以上でもそれ以下でもない、と。
かたや「谷村みすず」。彼女は「富士登山電車」の客室乗務員だ。ならば駅務係と友人関係になる可能性も十分ある。しかしシフトの都合上大月みーなとは出会いにくいかもしれないし、出会えたとしてもショッピングに行くほどの仲ではないかもしれない。設定として「繋がりがない」という選択もあったのに、富士急行は「繋がりがある」という選択をした。「富士登山競争の五合目コースを完走したことがあり、目標は山頂コース完走」など、現実的な設定を出した中に入り込んだこの設定を、単に「おまけ」でつけたとは思えない。これは私の予想でしかないが、富士急行は「谷村みすず」を「富士登山電車のPRポスター」だけではなく、グッズ発売など多角的に使うつもりではないだろうか。当然それには「鉄道むすめ」シリーズへの登場ということも含まれる。
これらはあくまでも私個人の予測でしかない。今後どうなるかは時間が経たないと分からない。

「谷村みすず」の使われ方如何では、鉄道会社に「萌えキャラ」が広がる可能性も。

鉄道むすめ」シリーズの発売開始と各鉄道会社での関連イベント開催、京急公式サイト上での萌えキャラ登場、そして東武お客様センターイメージキャラクター「姫宮なな」の登場。しかし「姫宮なな」が登場して以降、積極的に萌えキャラを活用していこうという鉄道会社はしばらく現れなくなった。ただ今まで扱ってきたところが新規キャラでイベントを始めたり、あるいは派生イベントをやるだけに留まっていた。他の鉄道会社が手を出してこない理由は何となく分かる。
数多くの「萌え」系アニメや漫画が登場していく中で、アニメオタクやフィギュアマニアなどいわゆるアキバ系オタクの関心はどんどん新作へと移っていき、そのキャラクターに対する人気は時間と共に落ちてしまう。一方で、アキバ系オタクでない人からは「萌えキャラ=オタクの趣味の対象」と見なされる傾向があり、「一部の人にだけ受ける」状況に陥りやすい。2009年9月25日付ブログで、「萌えキャラ」でイメージアップを図るにはそれなりの「覚悟」が必要となる、と書いた。支離滅裂な話の中でぶちまけたが、「萌えキャラ」がそういう性格を持つものである以上、導入には慎重な判断を要するし、それだから「ゆるキャラ」よりもイメージキャラクターとしての採用事例が少ない。鉄道会社は地元密着、かつ堅実経営でなければならない。他での採用事例が少ない「萌えキャラ」に自分たちから手を出してこないのは、ある意味当然ともいえる。今回の「谷村みすず」はそんな状況の下で登場した。
現時点で得られる情報から予測するのは、富士急行が「谷村みすず」を多角的かつ積極的に活用していく可能性の高さだ。しかし富士急行が今後彼女をどのような形で使っていくのか、そして何よりも「鉄道むすめ」シリーズとのタイアップがあるのかどうか、それはまだ公式には公表されていない。もしかしたら東武鉄道のように「あくまでも富士登山電車のPR」だけに留めるかもしれない。ただ一つだけ言えるのは、この件を知って富士急行の動きを注意深く見守っている会社は、恐らく何社かあるだろうということ。今は様子見であっても、富士急行の使い方と結果次第では、追従して「萌えキャラ」を採用するところが今後出てくるかもしれない。

*1:まさか『月面兎兵器……』に登場する彼女じゃないだろう?

*2:栗橋みなみの従姉妹という設定で「栗橋あかな」のフィギュアが発売されたことはあった。しかしあくまでも東武商事が扱う限定フィギュアであり、東武商事あるいは東武鉄道のイメージキャラクターではない。