テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

秘境駅訪問までもツアーにしてしまうJR東海のしたたかさ

日曜日に南大高駅まで行ってきまして、どんなもんなのかと見てきました。で、ショッピングセンターの中も見てきて、へそだしコスチュームのチアリーディング(もちろん現役)に「おおっ」と感嘆して、そして駅に戻ってきたら回送列車が来たんです。はい、例によって例の「キハ75形」です。
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こんなところで快速の通過待ちをしているとは。それならば大府〜名古屋間を間合い運用で「普通列車」として運転してくれればいいのに。……無理か。
で、今回の話はこれとは関係ない。明日から5月5日まで飯田線豊橋天竜峡間において団体臨時列車が運転されるのだけれど、その列車に使用されるのが373系で、しかもその運行目的が「秘境駅」なんですよ。そしてこともあろうに、そのツアーの主催はJR東海ツアーズ。3月の地元紙折込チラシでもう知ってたんだけど、マニアックすぎて書くべきかやめとくべきか迷いまして……。

秘境駅」は鉄道ファン向けのネタです。

最初に自分が見たのは地元紙の折込チラシ。ネットで調べていたら2月中にもうJR東海ニュースリリース」でこの件が発表されていた。さらに3月には朝日新聞Web速報サイトでも紹介されている。

 駅の周りに人家がなく、自動車でも行けない「秘境駅」が、インターネットなどで話題を呼んでいる。JR東海は今春の大型連休、「秘境駅」が多いと評判のJR飯田線で、「秘境駅探訪ツアー」と銘打った臨時列車を初めて運行する。

「GWは秘境駅探訪ツアーへ JR東海、飯田線で臨時列車」朝日新聞Web速報サイト2010年3月14日配信記事より)

で、ここで言っている「秘境駅」ってそもそも何なのか。

  • 秘境駅とは、大自然の真っ只中にあるような駅で、周囲に人家が少なく、基本的に鉄道でしか行けない駅のこと。
  • 最初に紹介したのは、朝日新聞の記事でも紹介されている牛山隆信氏。
  • 牛山氏が自身のホームページに画像つきで紹介し、それがきっかけとなって一部の鉄道ファンに「秘境駅探訪」が広がった。
  • 同氏のサイト「秘境駅へ行こう!」では、ランキング形式で200位までを紹介。今回探訪の対象となる飯田線の各駅は、全てこのランキングに入っている。

そう、「秘境駅」は普通列車しか基本的に停まらないし、JR参宮線池の浦シーサイド駅のように臨時駅扱いのところは、普段は普通列車すら停まらない。今回訪れる駅の一つ、田本駅はホームの背後がコンクリート製の防護壁、目の前は天竜川の断崖絶壁というとんでもないところにある。「秘境駅探訪ツアー」とは、そういうところへ行くってことです。こういうところへ行くのは鉄道ファンか地元の人しかない。少なくとも一般の観光客が行くような場所じゃないんです。
ところが、ですよ。このツアー、6つの駅を日帰りで巡るため、日程が超過密スケジュール。その上に鉄道ファンにはあまり関係のなさそうな「予定行動」が入っている。

各駅停車時間、僅か10分。それで何ができると?

今回のツアー用に、団体臨時列車「魅惑の飯田線 秘境駅号」が静岡車両区所属の373系で運行される(この日記を書いている時点では「運行予定」)。373系は特急「ワイドビュー伊那路」でも使われているけれど、今回のは静岡車両区所属のですからね。ただ、そんな編成をわざわざ静岡から回送してくる割には、運行ダイヤはとんでもない「過密スケジュール」。『鉄道ダイヤ情報』2010年5月号の「団体列車運転予定表」に出ているダイヤを見ると、小和田駅には12時30分から12時50分まで20分間停車しているのに、それ以外の駅は全部停車時間が僅かに10分。先ほど述べた田本駅にも10分しか停まらない(14時14分から14時24分まで)。
さぁ、10分で何ができる? ホーム上の複数の箇所から写真を撮影して、感慨に浸りながらホームの上を歩いたら10分なんてあっという間に過ぎてしまう。田本駅豊橋側トンネルの山道を10分で駆け上って、景色を眺めて下りてこれるとでも? Wikipedia日本版の説明によれば、片道だけで15分かかると書かれている。列車の発車までに間に合わないじゃないですか。だから「秘境駅好きな鉄道マニア」は絶対このツアーに申し込むことはしない。ていうか、元よりこのツアーはそういう人たちの申し込みは想定してないと思うんです。ならばターゲットは……。

秘境駅」で本当に一般観光客も飯田線に呼び戻せると思うか、JR東海

広島県三次市の牛山隆信さん(43)のホームページと本「秘境駅へ行こう!」をきっかけに、鉄道ファンらが足を運ぶようになったため、JR東海JR東海ツアーズが連携して日帰りツアーを企画した。
(上記同記事より)

朝日新聞の記事にはあるけれど、行程そのものからして「鉄道ファン寄り」じゃない。パンフレット(PDF)を見ると、結構したたかなことをやっているのが分かります。列車の入替作業のため、として折り返しの天竜峡駅だけでなく、平岡駅でも下車させている。ここで地元特産品の販売コーナーに「誘導」するんです。そして天竜峡駅で「列車締め切り」にして乗客を追い出し、「天竜峡川下り」と「地元特産品販売コーナー」に誘導。帰りは当然のように「秘境駅」には停まらず、すんなりと豊橋まで戻ってくる。行き帰りの行程で地元特産品コーナーへ誘導するという手は、一般的な国内ツアーと同じやり方です。
今回のケースは、あくまでも私の予測だけれど、飯田線の利用者数が減ってるんで、その打開策の一つにしたいんじゃないかな、と。飯田線沿線の観光名所って、他と比べると(地元の方々には失礼だけれど)本当に数が少ない。ところが昨今の「鉄道ブーム」で「秘境駅」というものが注目されてきた。調べて見ると、それを最初に言い出した牛山氏がJR飯田線の6つの駅を紹介している。ならばそれをネタにして、一般観光客向けにツアーを売り出してしまえ、と。「鉄道ファンの間で秘境駅と呼ばれる駅があります。この度、当社ではそれらの駅にも降り立てるツアーを作ってみました」と……そんな感覚ですかね。
JR東海JR東海ツアーズも、「秘境駅」で飯田線を今後県外に売り出す気はないでしょう。なので、牛山氏が望む「秘境駅を残す」目的には恐らく繋がらない。まぁもっとも、中部天竜天竜峡間って各駅に停車する列車の極端に少ない「超閑散区間」なので、この機会にと申し込む鉄道ファンは相当いると思いますよ。ただ、こんな行程で鉄道ファンが納得するかどうかは別問題。明日、いや、5月4日か5日あたりに豊橋駅まで行って、どのくらい「それっぽい人」が降りてくるか見てこようかな。


ここまで書いたところで、本日の話はお開き。私はこんなツアーには申し込まず、昨年やった「スルッとKANSAI3dayチケット+大阪周遊パス」の組み合わせを使い、今度は石山寺から始めて、京都・奈良・大阪・神戸を駆け抜けるコースをまた考えてます。何しろ奈良遷都1500年祭の真っ只中という、一番混雑する時に「スルKAN3day」の季節限定版が使えますからね。