テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

三岐鉄道に「眼鏡っ娘」の女性運転士誕生

 三岐鉄道北勢線で初の女性運転士が誕生した。入社3年目の水谷静菜(せな)さん(21)と2年目の米谷麻美さん(23)で、12日に初めて乗務した。
「初の女性運転士「子どもに夢を」 三岐鉄道北勢線」asahi.com 2011年1月13日付記事)

岩手県三陸鉄道じゃありませんよ。三重県三岐鉄道での話です。二人とも二本のレールの間隔(軌間)が762ミリメートルしかない「北勢線」の運転士で、12日に初乗務をしたとの事。三岐鉄道も「赤字垂れ流し」の状態で明るい話題がなかなか出てこなかった。このニュースにより、もう一度この路線を地域住民が利用するようになればいいのだけれど、どうなんだろうなぁ。
その話はともかく、私は一つだけ気になったことがあった。「入社後数年での運転士誕生」とか「女性である」とかではなくて、二人とも「眼鏡っ娘」だという点だ。鉄道の運転士って眼鏡をかけててもなれるのか?
(追記:言っておくけど批判記事じゃないからね? ど素人の疑問だからね)

海技士試験の受験資格に屈折度数の規定なし。しかし航空機のパイロットは……。

鉄道の話をする前に、まずは船舶や航空機の操縦免許を取るのに必要な視力について述べておきたい。
船舶の場合、小型船舶操縦士免許と大型船舶の運行業務に必要な「海技士」とでは視力に関する必要条件が異なってくる。小型船舶操縦士免許だと「両眼共に0.6以上の視力」、もしくは「片目が0.6に満たない場合、もう一方の眼が視力0.6以上かつ左右視野150度以上」と規定されている。一方で、「海技士」では「両眼とも0.6以上の視力」が必要だと規定されている。「海技士」の方が視力に関しては少し条件が厳しいが、いずれも「矯正視力であっても構わない」と言う点は共通だ。
航空機の場合、視力に関する条件はもっと厳密だ。財団法人航空医学研究センターの公式ページには視力に関する条件が書いてあり、プラスマイナス8.0ジオプトリーを超えない範囲での矯正眼鏡で各眼が0.7以上の視力に矯正できる(第2種)、あるいは各眼が0.7以上かつ両眼で1.0以上に矯正できる(第1種)ことが条件となる。この「ジオプトリー」とはレンズの屈折度数のことで、1メートル(100センチ)をレンズの焦点距離で割った数値だ。屈折度数8.0のレンズとは焦点距離12.5センチのレンズで、強度近視もしくは強度乱視用に使われる。だからこれは本当に最低条件で、各航空会社における自社養成パイロットの身体的要件はもっと厳しい。日本航空の場合、自社養成パイロット採用の条件に、「-5.5から+2.0までの屈折度数を持つレンズ」で「矯正視力が1.0以上」であること、と明記してある。-5.5の近視用レンズの焦点距離は約18.18センチである。航空会社の自社養成パイロットとして採用されるには、強度の近視や遠視、乱視であってはならないのだ。くそう……ちなみに私がまさに強度の乱視(視力0.1)です。

動力車操縦者運転免許」は「近視」でも取れる可能性がある。

鉄道の運転士になるには「動力車操縦者運転免許」が必要だ。この免許は「動力車操縦者運転免許に関する省令」(昭和三十一年七月二十日運輸省令第四十三号)で規定される免許で、肝心の「視力に関する規定」は第八条の二が指定する別表二に規定されていて、

  1. 各眼の視力が裸眼で一・〇以上又は矯正眼鏡(近視にあつては八・〇ディオプトリー以下の屈折度のもの、遠視にあつては三・〇ディオプトリー以下の屈折度のものに限る。)により一・〇以上に矯正できること。
  2. 正常な両眼視機能を有すること。
  3. 正常な視野を有すること。
  4. 色覚が正常であること。

の全てを満たさなければならない、とある。ああ、やっぱり強度の近視や遠視、乱視では鉄道の運転士にはなれないんだなぁ。でも航空会社の自社養成パイロットよりは採用条件は明らかに緩い。件の女性運転士お二人がかけている眼鏡も規定の範囲内にある屈折度数のレンズだったんでしょうね。でなきゃ身体検査でもう不合格になっているはずですから。
三岐鉄道に新米の運転士が二人誕生した。彼女らがここにずっと居残ってくれるかどうかは経営努力? いや、たぶん沿線住民の利用率にかかっていると思う……とオチにすらならない文言で締めくくって、本日の日記は終わり。ところで日本各地で大雪の天候となったのだけれど、鉄道ファンはそれでも列車の撮影に出かけたのかな?


参考資料: