大須演芸場、閉鎖するはいいがその後どうするの？

　半世紀の間、幾度も存亡の危機を乗り越えてきた名古屋唯一の常打ち寄席「大須演芸場」（名古屋市中区）がまたも窮状に直面した。足立秀夫席亭（７９）側の賃料滞納によって、民事執行法に基づき、建物の所有会社（名古屋市）に引き渡される強制執行手続きに入ったためだ。引き渡し期限は２２日。所有会社の弁護士によると、来年１月末まで公演を継続し、同２月末に引き渡しを求める協議をしているという。
大須演芸場引き渡しに　賃料滞納で窮地（朝日新聞デジタル2013年11月15日15時23分配信）

お客の入りが殆どなく、いつかはこうなると思っていた。いや、一度も行った事がない奴が言うセリフではないか。
大須演芸場、現状では来年一月末をもって閉鎖、同年二月末には建物を所有者に引き渡すことになる。
うん、引き渡すとか言っているけどその後どうするの？

名古屋に常設の演芸場は大須しかない

東京は新宿「末廣亭」に浅草演芸ホール、池袋演芸場、お江戸上野広小路亭など多数。一方、常設の演芸場がなかなかできなかったと（Wikipediaでは）される上方も、大阪天満宮内に「天満天神繁盛亭」が開設され、そこで定期的に落語や曲芸などの演芸が披露されるようになった。では名古屋は？
昔は多数あったそうだ。だが名古屋に、というか中京地区において常設の演芸場は今や大須演芸場しかない。そこが消えたらどこで落語とか曲芸とかの公演をやるの？　名古屋能楽堂？　金山の日本特殊陶業市民会館？　経営再建中の御園座？　やるには広すぎて演者の声がとどかないのではないのか？　ちなみに天満天神繁盛亭は１階・２階合わせて２１６席、新宿末廣亭は３１３席しかない。
それを考えると、名古屋、というか中京地区における落語等の演芸公演は、「大須演芸場閉鎖」を境に一気に少なくなるかもしれない。海外ミュージシャンのライブツアーで「東京・大阪では開催するけれどその間の名古屋ではやらない」、という例が多々ある。落語の独演会もそのうち名古屋ではやらない、「名古屋飛ばし」が起こるかもしれない。

大須演芸場を取り壊しても跡地に利用価値なし

私が気にしているのは、演芸場を潰して何か別のものを始めようとしても何も出来ないのではないか、ということだ。Googleマップの現地周辺地図を以下に出しておく。適当に拡大して見ていただきたい。

（別ウィンドウで表示したい場合はこのリンクをクリック）
縦横２０メートル四方程度の狭い土地である。同じ区画の南東側に位置する「コメ兵カメラ・楽器館」とほぼ同程度の敷地面積ではないかと推測される。そしてその土地の上に建つ大須演芸場。１９６２年建築、木造二階建てである。では大須演芸場引渡し後、建物の老朽化に伴い取り壊したとしよう。
オフィスビルを建てたとする。付近にはオフィスビルが一杯ある。現時点で空室もまだある。
マンションは？　これまた他にマンションが多く建っており、新たにマンションを建てたところで入居者が来るかどうか怪しい。
駐車場は隣に既にある。イベント時以外での需要はないと断言できる。
ではコンビニか？　東仁王門通りから一歩路地を入った場所であり、しかも周辺にコンビニは多数ある。儲かるのか疑問符がつく。
そもそも大須演芸場敷地の地価は相当高いはずだ。買うにせよ借りるにせよ、その公示価格が足を引っ張るだろう事は容易に想像がつく。結局遊休地となって何も出来ない、そう私は思っている。

落語家があそこで落語会を開催しない、そこが問題！

大須に常設の演芸場がある。ところがあそこで高名な落語家が落語会を開催しない。じゃあ何のための演芸場？　経営難と聞くとやってきて、でもそのまま定期的にやるわけじゃない。一番の問題はそこなのに、誰も指摘しない。落語協会も落語芸術協会も、さらには上方落語協会も全く素知らぬ振りである。二代目快楽亭ブラックさんだけで持つわけないだろと言いたくなる。
そのうちまた「経営難を救うため落語会を開催」なんて記事が地元紙の社会面に載るだろう。そしたらツイッターでこう書いてやるつもりだ。
「そんなことするくらいなら、滞納中の賃貸料全額代わりに払え、このクソ野郎共」
演芸場を何としてでも存続させるしか解決策はないんだよ、と書いたところで本日付記事はおしまい。
で、そういえばリニア・鉄道館において、７００系新幹線Ｃ１編成１号車を展示中の３００系Ｊ２１編成と入れ替える、という話があったそうで。最近作られた７００系をその前の３００系と入れ替えたところで、どのくらいの客が新たに見に来るんですかねぇ？　まぁ別にいいんですけど……。
http://jr-central.co.jp/news/release/nws001330.html