テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

震源地、三陸沖。M9.0 〜 必要とされるなら何度でも鉄道線は復活する

 3月16日に久慈〜陸中野田間で、3月20日には宮古〜田老間で、3月29日には田老〜小本間で運転を再開しました。被災したお客様からの「ありがとう」の言葉が耳に残りました。不眠不休で復旧作業に当たった社員にも笑顔がありました。

 しかし、自力で復旧できるのはここまでです。現在の運転再開区間は全線の1/3、輸送力は震災前の1/10にすぎません。残りの区間の復旧は、国などの支援がないとできません。全面復旧には、莫大な経費と長い時間が必要です。
http://www.sanrikutetsudou.com/2011/04/%E4%B8%89%E9%99%B8%E9%89%84%E9%81%93%E7%A4%BE%E9%95%B7%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%80%8C%E4%B8%89%E9%99%B8%E9%89%84%E9%81%93%E3%81%AE%E5%BE%A9%E6%97%A7.html

2011年4月4日付で三陸鉄道公式サイトに掲載された、「三陸鉄道社長からのメッセージ」。それを読んで私は疑いの目を向けざるを得ず、「本当にここまでなのか」とブログに書こうと思った。思って、それをやめた。三陸鉄道が多額の累積赤字を抱えているのは有名な話である。
道路、住宅、農林水産業、工業施設、いずれも今回の震災とその後に襲った津波阪神・淡路大震災以上の被害を受けた。復旧に多額の費用(と時間)がかかるのは明白だ。しかしその費用が出せない場合はどうなるのか。工場なら閉鎖、農林水産業なら廃業を迫られるのだ。これは鉄道線も同様だ。JR東日本社長は4月5日の定例記者会見で、被災した全路線の復旧を目指すと明言したそうである。しかしそれはあくまでも「黒字経営」の会社(の社長)だから言えること。累積赤字が多額に上る三陸鉄道のどこにも埋蔵金などありゃしない。いや、これは言いすぎか。 
赤字経営が続く鉄道会社の路線を存続へと導くのは一体何なのか。ある路線の復旧状況を見て、実は震災前となんら変わりないのではないかと思った。その路線とは、「メイド列車」を走らせたあの「ひたちなか海浜鉄道」だ。

鉄道線の震災からの復旧には、沿線住民の熱意がやっぱり必要

16日夜、震災で1か月お休みしたドゥナイトマーケットが復活しました。

 震災復興を旗印に、那珂湊の商店街で約3時間。

 満を持しての開催だけに、普段の約3倍の来場者があったようです。
ひたちなか海浜鉄道日誌

全線復旧にかかる費用、約2億9千7百万円。そのうち半分強に相当する1億7千4百万円を地方自治体負担分及び貸付金として助成してもらうことになった(「ひたちなか海浜鉄道日誌海浜鉄道日誌2011年4月17日付)。この支援金を使って復旧して、ひたちなか海浜鉄道に震災前と同様に乗客が戻ってくる、という保証はない。客が戻らず廃線になる可能性だってあるのだ。しかし市議会は支援することを決めた。そしてその上に、この「ドゥナイトマーケット」の盛況ぶりがある。ひたちなか海浜鉄道の沿線住民にとって、「ひたちなか海浜鉄道」という単線ローカル第三セクター線は絶対に「必要」なものなのか。自分たちの生活の再建もかかっているだろうに、市議会の決定に対して反対運動が起きた、という話は今のところ見当たらない。駅前商店街だけが踊っているのかと思っていたが、そうではないらしい。沿線住民のその意思が揺らぐことがないことを祈るばかりだ。

一番肝心なのは「沿線住民が今後もその路線を必要とするかどうか」だ。沿線も壊滅的な被害を受けたこの三陸沿岸地域、果たして鉄道線の復活を望む声はどれだけ上がっているのか。そこからまず始めないと何ともならない。
震災以前から名鉄西尾・蒲郡線の存廃問題を例にして、「鉄道線の存続には沿線住民の強い意思が必要」と書いてきた。東海三県だと三岐鉄道北勢線樽見鉄道、愛知高速鉄道リニモ」や名古屋臨海高速鉄道あおなみ線」の累積赤字問題は民放のニュースでも取り上げられたほどだ。名古屋臨海高速鉄道は遂に赤字を解消できず民事再生法の適用を受けた。これらの路線、もし震災で壊滅的な被害を受けたらどうなるのか。
今回の震災は阪神・淡路大震災の比ではない。あの時は何とか鉄道線は復旧したが、今回は路線単独で赤字のローカル線が大きな被害を受けた。こんな時、復旧費用だけ出せば本当にいいのか。そもそも沿線住民は路線を残したいのか、それとも赤字続きのローカル線は廃線にして代行バスを運行して欲しいのか。それらの問いに対する答えを先延ばしにすることだけは、絶対許されない。