テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

IC乗車券「manaca」サービス開始。しかし今すぐ買っていいか?

2011年2月11日、名鉄名鉄バス名古屋市交通局豊橋鉄道名古屋臨海高速鉄道、及び名古屋ガイドウェイバスの6社に共通して使えるICカード式乗車券「manaca」の運用が始まった。中日新聞2011年2月12日付朝刊の記事によれば、初日は午前中だけで名鉄が1万5千枚、名古屋市営地下鉄は午後1時までに1万1千枚を販売したそうである。え、少ない? そりゃそうだ。いわゆるプレミアム付加率は場合によっては磁気式プリペイド乗車券「トランパスカード」よりも低いのだから。今買っても使いようがない、とはまさにこのことである。ていうか沿線住民をなめてかかってるだろ、名鉄名古屋市営地下鉄も。

各社のポイント付与率

事業者 交通基本ポイント 最低額 交通加算ポイント 基準 買い物ポイント
名鉄(鉄道) 2〜8% 2001円 3%もしくは6% 11回 あり
名鉄バス 利用額の2% なし 50・100・150ポイント 2000円・5000円・10000円到達時 名鉄に準じる
豊橋鉄道 1・3・5% 10回 なし なし 名鉄に準じる
名古屋市交通局 10%〜13% 2000円 20%もしくは30% 左記は平日昼間及び土曜・休日に限る なし
名古屋臨海高速鉄道 名古屋市交通局に準じる 名古屋市交通局に準じる なし なし なし
名古屋ガイドウェイバス 名古屋市交通局に準じる 名古屋市交通局に準じる なし なし なし

こうやって各社のポイントサービスをまとめてみると利用ポイントサービスがバラバラなのがよく分かる。特に買い物時における利用ポイントサービスが全く統一されていない。そしてその上に普段の買い物でポイントを貯めるには、名鉄名鉄バス豊橋鉄道が発売するmanacaカードを買わなければならない。名古屋市交通局名古屋ガイドウェイバス名古屋臨海高速鉄道が発売するカードでは買い物によるポイント付与サービス「たまルン」は受けられないのである。こりゃあ、後々「買い物ポイントサービス」が受けられないという理由で、名古屋市交通局にカードの返品が、さらに名鉄に対して「名古屋市交通局発行のカードでも『たまルンサービス』が受けられるようにしろ」と、カードの購入者から多数のクレームが来そうな気がする。まぁ私が願うところはそこなのだけれど(笑)。

共通システムなのに発行元が一本化されていないのが全ての原因。

manaca」という共通システムを決めておきながら、なぜこんなバラバラなポイント運用システムにしてしまったのか。理由を特定する鍵はカードの発行元が違うという点にありそうである。すなわち名鉄グループ及び豊橋鉄道が発売するmanacaカードは株式会社エムアイシー、名古屋市交通局名古屋臨海高速鉄道及び名古屋ガイドウェイバスが発売するカードは株式会社名古屋交通開発機構が発行元となっているのだ。では他の私鉄系IC乗車券カードはどこが総発行元となっているのか。

PASMO(関東地区)
株式会社パスモ(加盟各社の共同出資会社)
PiTaPa(関西地区)
株式会社スルッとKANSAI(加盟各社の共同出資会社。「スルッとKANSAI3DAY/2DAYチケット」の発行元も実はここ)
はやかけん(九州地区)
福岡市交通局
nimoca(九州地区)
西日本鉄道(福岡)
KitacaJR北海道)・SuicaJR東日本)・ICOCAJR西日本)・TOICAJR東海)・SUGOCAJR九州
JRグループ各社

西日本鉄道の「nimoca」と福岡市交通局の「はやかけん」はそれぞれ独自のシステムで、相互利用によるポイント付与はない。よって同一名称のICカード乗車券システムを複数の発行会社が扱い、相互利用によるポイント付与があり、それでいて仕様が異なるのは「manaca」だけなのだ。話をややこしくしているのはすべてそこが原因である。勘のいい鉄道ファンは、manacaのポイント付与システムが公開された時点で気づいただろう。

沿線住民よ、「manaca」は「トランパス対応カード」よりもポイント付与率が低いのだ!

実は今まで発売されてきた「トランパス対応カード」の券種は2000円・3000円及び5000円の3種類があった。そして最低額の2000円券を買うと2100円分使うことが出来た。ポイント付与率5%である。このカードを一ヶ月で1050円分しか使うことが出来なくても、ポイント付与率は5%(額面1000円分に対し1050円分の利用)のままだった。ところがmanacaは1000円分利用してもポイントは一切付かない。いや、厳密に言うと名鉄の鉄道線及び豊橋鉄道に限っては「利用回数に応じたポイント」が付くのだが、それも最低11回乗らないとダメである。例えば名鉄名古屋駅金山駅間の運賃は大人片道180円であるが、この間を往復するためだけにmanacaを使うと(んな使い方は考えにくいが)、運賃自体に対する最低付与条件(2000円)を超えるには6往復必要で、乗車回数によるポイント付与だけを期待しても5往復半しないともらえない。こんな馬鹿馬鹿しいポイントカードがあるものか。
ポイント付与率の設定基準は、九州地区の「nimoca」や「はやかけん」のように、運賃にかける付与率は低くする代わり、乗車回数が少なくても少しずつポイントがたまるようにするべきだ。福岡市交通局の「はやかけん」の場合、1ヶ月の乗車料金額の2%が常にポイントとして還元されるシステムだ。西日本鉄道nimoca」も、1ヶ月に1回乗車しただけでも運賃引去額の1%(小数点以下端数切捨て)がポイントとして付与される。この「nimoca」、2010年5月7日で累計発行枚数が100万枚に達したそうである。実際にはクレジットカード会社との提携カードもあり、それを除いた現金チャージ限定のカードは同日付で約96万枚。「現金チャージ式ICカード乗車券、約2年で96万枚」ってこと自体すごいことである。
話を元に戻して「manaca」。発売日当日、名鉄では午前中だけで1万5千枚を売り切ったそうだが、このペースが今後も持続すると、「nimoca」が発行枚数20万枚を達成した232日目で348万枚も発行される計算になる。もちろんそれはありえない。初日の発行枚数が「manacaデビュー記念デザインカード」9000枚を含む数字であるし、何よりも「トランパス対応カード」の利用者やそれすら利用してこなかった人たちに、「2001円以上1ヶ月に利用しないとポイントあげない」と見下した態度で売り込んでいる。客を見下した態度で売り込む商品にろくなものはない。

こんなシステムにしたのはいったい誰だ?

それにしてもいったい何でこんなことになってしまったのか。悪いのは名鉄かそれとも名古屋市交通局か。最後に私の妄想話を一つ。
名古屋市交通局の場合、「ドニチエコきっぷ」などフリーきっぷに対して特典を多数付けている。その特典の多くは飲食店で、「たまルン」がポイント付与の対象としている業種ともろにかぶる。もしここで名古屋市交通局が「買い物ポイント付与サービス」を始めると、今までフリーきっぷの販売促進、ひいては乗客獲得のためにやってきたことが水の泡と化す可能性が高い。年間100万枚ペースで売ってきた「ドニチエコきっぷ」が売れなくなるのだ。それで「買い物によるポイント付与」は見送ったのではないか?
一方、名鉄側としてはカード発行によるメリットを独り占めしたいので、発行枚数という実績をぶら下げて名古屋市交通局などから「発行事業者」という権利を取り上げたい。だから独自に「買い物によるポイント付与サービス」を始めた。それにカード発行業務が名鉄グループ企業の一社独占ならシステムはいくらでも改変できる。改良なら乗客にメリットはあるが、ポイント付与率の改悪、あるいはポイント付与システムを突然終了する可能性もある。西尾・蒲郡線及び広見線新可児御嵩間の廃線問題で、沿線市町の関係者にmanacaシステム導入の話を一切しなかったところである。あるいは豊川市観光協会(=豊川市)に突き動かされて(恐らくキャンペーンの運営費用も一部出してもらって)、ようやく「フリーきっぷ発売」を決めたとんでもない会社である。ここがやることは「常に疑ってかかれ」である。


とにかく「manaca」のサービスはむちゃくちゃである。発行事業者の予想を(彼らにとって悪い意味で)裏切るような使い方を考えないと大変だ。なので私は3月になるまで様子を見ることに決めた。
そういえば地元TVのニュースで3枚も買ってカメラに見せびらかしていた奴がいたが、普通同じICカード乗車券を3枚も買う奴はいない。彼は明らかに鉄道ファン、それもコレクター系である。ていうかあの行列に鉄道ファンが何人いたんですか?


・参考URL
ƒy[ƒW‚ªŒ©‚‚©‚è‚Ü‚¹‚ñ
404 NotFound|名古屋市交通局
http://subway.city.fukuoka.lg.jp/index.html
nimoca