テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

三連休パスも土・日きっぷもなくなるのに、会津ぐるっとカードがなくならないこの状況って……。

三連休パスは、2010年3月22日をもって終了いたしました。ご利用ありがとうございました。
http://www.jreast.co.jp/tabidoki/service/sanrenkyu/index.html?src=dokisvcpr

「とれいん工房の汽車旅12ヵ月」2010年4月6日付「三連休パスは3月で発売を終了した、っぽい。」で、「上記画面が一瞬表示されて」ってもりくち氏が言っておられた。たぶん「旅どき.net」のトップページに自動転送されたのだと思う。まぁそれはともかく、「三連休パス」と聞いて思い出したのが、会津地域で利用できる「会津ぐるっとカード」の存在だった。2009年10月3日付「第3セクター鉄道会社の再生策は「萌え」と「その手のヲタ」狙いのイベントだけか?」の中で触れた通り、このきっぷは国土交通省東北運輸局及び東北地方整備局の「鳴り物入り」、というか全面支援を受けて発売された。こんな不況のご時世だからなぁ、発売しているのだろうか……と思って調べたら以下の記事が出てきた。

全日空グループの旅行会社・ANAセールスは、会津地方の主な公共交通機関が2日間乗り放題となる「会津ぐるっとカード」の引換券を4月1日、発売する。
空路を使って会津を訪れる観光客への普及を目指す。
〜空路観光客にも「会津ぐるっとカード」発売:KFB福島放送公式サイト2010年3月25日付より〜
(記事は福島放送公式サイトにない可能性もある。上記文面は自動巡回時に取得されたGoogleのキャッシュから引用)
http://www.kfb.co.jp/news/index.cgi?mode=daily&d=20100325

会津ぐるっとカード」公式サイト(http://www.aizukanko.com/aizucard/index.htm)の「引換券発行箇所」にも「ANAセールス(平成22年4月1日〜)」と書いてあったので間違いはなさそう。ANAセールスは国内・海外ツアー商品を販売する全日空の子会社で、ここで扱ってもらえるようになったことは大きい。ついに、というかやっとというか、でもこんなのんびりとした販促拡大策でいいのか、おい。会津ぐるっとカードって仙台まるごとパスの半分も売れてないのよ。

フリーきっぷを発売した「見返り」は何かあったのか?

東北地区においては、自治体が運営に関与するフリーきっぷが会津ぐるっとカードを含めて4つあり、調べてみたら全て今年度も発売継続となっていることが分かった。

これらのフリーきっぷについて発売実績を調べて見ると、いずれも「三連休パス」よりも枚数が下回っていることが分かった。以下は平成19年度の実績データだけれど、仙台まるごとパスについては平成20年度の発売実績もまだ2万枚に届いていない。八戸えんじょいカードの発売実績は結局分からなかったけれど、「大好評」という話を聞かないからそれなりの枚数しか売れていないと思う。ちなみに三連休パスの平成20年度利用者実績はのべ8万8千人だそうだ(参考資料:http://www.jreast.co.jp/press/2009/20090603.pdf)。

名称(URL) 平成19年度発売実績(単位:枚) 参考URL
会津ぐるっとカード 5996枚 http://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/ja/machi/g_hyouka/index.htm
仙台まるごとパス 18517 http://www.stcb.or.jp/stcb/img/19_jigyouhoukoku.pdf
津軽フリーパス 3513 http://www.mutusinpou.co.jp/news/2008/05/2168.html

実はこれらのフリーきっぷはいずれも、自治体、交通事業者及び観光商工事業者が参加する運営協議会が発売し、発行に必要な費用は交通事業者だけでなく自治体も補助金という形で提供している。しかもフリーきっぷ関連の予算は、交通路線の維持を目的として拠出されている補助金とは別に出ている。例えば五所川原市の平成22年度当初予算を例にとると、「津軽フリーパス運営協議会負担金」として52万円を計上している他に、予算書を見て分かっただけで以下の事業に対して補助金を計上していた。その額、6212万3千円。

  • 津軽鉄道活性化協議会負担金:44万4千円
  • 五能線沿線連絡協議会負担金:31万円
  • 生活交通路線維持費補助金:698万2千円
  • 五所川原市生活交通路線維持費補助金:4744万5千円
  • 金木地域生活交通路線維持費補助金:520万8千円
  • 行政連絡バス運行事業:173万4千円

発行する自治体側は「この地域に来訪する観光客を増やすため」だとして、フリーきっぷを発行し続ける。「フリーきっぷを利用して来る観光客を増やす」ということは、「結果的に交通路線の利用者を増やす」事にも繋がる。恐らくそういう理屈なんだろうな。でもフリーきっぷの発行にはきっぷの制作費や販売に必要な経費、宣伝費用だけでなく、実際に収受すべき正規運賃との差損も発生する。割引特典を提供している事業者に対しては、もしかしたら割引分の一部を補助しているかもしれない(ンなわけないと思うが)。費用対効果の面で見ると、数千枚レベルの発行枚数では割に合わないのではないか? 他に方法があったかもしれないのに、何で「フリーきっぷ」だったんでしょうね。

参考資料:

いい加減「割引特典つき」フリーきっぷを発売したらどうですか、JR東日本

当日利用のドニチエコきっぷ・一日乗車券を見せると特典が受けられるスポットに、
名駅地下街や星が丘テラスの飲食店などが新登場。
4/1「なごや得ナビ」に新スポット登場!名古屋市交通局公式サイトより)

4月1日より名駅地下街40店舗と星が丘テラスの5店舗が加わり、これでえっと……もうとっくの昔に200施設を越えてますよね。割引特典を提供している施設にとっては、その分の補助があるわけではなく、「なごや得ナビ」というガイドブックに掲載してもらえるだけ。でもそのガイドブックが初版10万部刷っても足りないほど持っていかれたとなれば、宣伝効果は大きい。ならば……あくまでも仮定の話。もし8万8千人ののべ利用者があった「三連休パス」でこれをやったらどうなるか。広範囲になるので特典提供事業者を集めるのが難しいことは分かっている。でも今まで「デスティネーションキャンペーン」という形で似たようなことをやってきているんだから、やれない話じゃなかった。違いますかね?
『週間東洋経済』4月3日特大号の特集記事に、和歌山電鉄を再生させつつある両備グループ代表取締役へのインタビューが載っていた。確かに「第三セクター任せでは再生は成功しない」けれど、自治体任せでも再生プロセスは進まない。これは地域観光振興策も一緒じゃないかな、と。「交通事業者主導でいい」とか「自治体任せでいい」とか「国の政策待ち」とか、あるいは「観光事業者任せでいい」なんて感覚でいると、たぶんいずれかの利益に偏ったやり方しか出てきません。理想的なのは三者が同じテーブルに着いて意見を出し合うこと。さらに地域住民もそこに何らかの形で参加していくことが出来れば、地域観光振興策なんていくらでも出てきそうな気がするんだけど。まぁこの辺でキリつけて、金曜日に書いているけれど木曜日付けの日記に放り込んでおきます。
そういえばもりくち先生、GW中はどこに行こうかと悩んでおられる様子。先生のことだから、たぶん北陸方面にでも行ってしまうんじゃないかな。個人的には、季節限定版「スルッとKANSAI3dayチケット」って地元住民にとって使いやすいのか、その辺をちょっと聞いてみたい。