テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

「鉄道むすめ」シリーズの制服選定は「買い手市場」?

佐久間レールパークに行った(それも初めて)というヘタレ全開な話は10月31日付記事にて書いた通り。個人的にはあのイベントに2日間で延べ何人訪れたのか気になっていたのだが、調べていたら毎日新聞静岡版の記事に「2日間で約1万5000人」という記述があった。結構きてたんだなぁ、と改めて思った。ていうか、あの時いたの1000人程度じゃなかっただろ、おい。
外部リンク:「佐久間レールパーク:さようなら 鉄道車両、一挙公開−−閉園惜しむ /静岡」毎日jp静岡版2009年11月3日付


佐久間レールパークのことはともかく、同日に行われていた三陸鉄道の「秋のさんてつ祭り」が少々気がかりだった。特に「鉄道むすめサミット」の参加者数が。いくら何でも引かれやしないか、と。でもそれは所詮「えせテツの杞憂」でしかなかった。当日行ったというMATSUDA98先生は自身のブログに、「ホールにみっちりです!」と書いておられた*1。また久慈市公式サイトにも当日のレポートが掲載されていて、画像で見る限り結構いたような感じを受けた*2。まぁ、函館市交通局がプレゼンした時と「久慈ありすのスイーツ列車」のプレゼンの時で、着席している客が違うように見えるけれどここでは突っ込まない。


で、今回の話は「さんてつ祭り」そのものじゃない。今まで三陸鉄道がらみの話で「久慈ありすというキャラクターに頼っていいのか」と言い続けてきたけれど、その根底としてきたのは「『鉄道むすめ』シリーズの人気が今後も持続するとは限らない」のと、「登場する鉄道会社(キャラクター)が関東の鉄道会社にまだ偏った状況なんで、他の鉄道会社が及び腰になっているのではないか」という点だった。ところが「人気の持続」はともかく、「他の鉄道会社が及び腰になっているのでは」としたのは本当に私の憶測でしかなかった。恐れ入る。まさか「トミーテック側が選んでいる」とは……。

あの、制服の「色」で選んでいるどころではないと思うんですけど……。

最近では、各社の成功事例を聞きつけたほかの鉄道会社から「鉄道むすめ」参加のラブコールが増えているそうだが、森山さんによると「商品ラインナップ上(黒や紺など)暗めの制服ばかりになってしまうわけにもいかず、明るい色の制服を採用している事業者はないかと探している」と、そう単純にはいかない事情もあるようだ。

『フィギュアがローカル線の救いの女神? 「鉄道むすめサミット」開催』(Exciteニュース‐Excite Bit コネタ)

Exciteニュースの信憑性はどのくらいかと判断に迷う点はあるが、書いたってことはそういう内容の発言をしたってことなんだろうな。「突然人気がなくなる」ってのは、こういう発言をきっかけにファンが離れていく、ということを指したつもりだったんだけど、所詮こんなところで書いても「2ちゃんねるで晒し上げ」がせいぜいか*3
愚痴は置いておき、過去のラインナップを見ても、関東圏以外の鉄道会社から1社もしくは2社が新規あるいは再登場という形で出ていた。

逆に言うと、関東圏以外の鉄道事業会社があれだけあるっていうのに、未だに1シリーズ6社のうち1社か2社しか入っていない。圧倒的に関東圏内にある鉄道会社の制服が多いのだ。この選定の仕方を見て、私は単に関東圏以外の各社は「参加するかどうか迷ってる」と思っていた。ところがそれが「暗い色の制服ばかりになってしまうわけにもいかないから、(トミーテック側が)選んでいる」っていうんだから恐れ入る。
製造企業として「造るものを選択すること」は非常に重要だ。開発にかけられる費用と時間は限られている以上、何か基準を設けて発売する優先順位をつける、というのは企業としてやって当然のこと。しかしいくら基準を置くにしても、服の「色」に置いたらほとんどの鉄道会社はアウトだ。特に運転士や車掌の制服は黒か濃紺かグレーがだいたい定番で、明るい色を採用しているところは全体から見ればまだ少ないと思うぞ。富山県万葉線でも女性の制服は「黒」だって聞いた事があるし。だいたい、この「鉄道むすめ」コレクションに手を出すファンって、制服の「色」をお目当てに集めているのか? 「色」ではなくて「制服そのもの」だと思うんだよな。
そもそも運転士や車掌の制服にこだわりすぎている気がする。別に「運転士や車掌」でなくても、アテンダントや駅長、売店の売り子、車内販売員でも買う奴は買うんじゃないか? むしろ基準とすべきは「制服の色」や「職種」ではなく、「その路線に独自かつ継続的な何かがあるか」にすべきなのだ。「独自性と継続性」が選定の基準と分かれば、手を挙げる鉄道会社も増えるだろう。現在日本各地の鉄道会社がこぞって「アテンダント」を乗務させているけれど、そのきっかけを作り出したえちぜん鉄道の列車アテンダントJR九州つばめレディは即対象になるだろう。ちょっと違うかもしれないけれど、由里高原鉄道矢島駅売店の売り子さんは「おばこ号の車内アテンダントに変わることがある」とかいう話があって、これをフィギュア化するってーのも悪くはない。いや、そもそもこのシリーズ、いろいろ「仕掛けて」くれている岡山電気軌道の運転士制服がないってーのは絶対におかしい。確実に対象になるだろ。ていうか、岡山電気軌道に3名いる女性運転士が今年の7月に期間限定で着た制服、たま駅長のイラスト入りTシャツだぜ。やってくれる。ああ、当然名鉄も入るよな。「知多みるく」さんに名鉄特急の女性車掌制服を着させるっていう「強力コンボ」が使えるんで*4


この「鉄道むすめ」シリーズという祭りがいつ終わるか、その「着地点」だけは見誤って欲しくない。

シリーズラインナップに対する愚痴はここでやめておく。この「鉄道むすめ」シリーズは鉄道会社のみならず、商店街も手を挙げるほどにまでなっていた。
外部リンク:栗橋商工会「新着情報」より「栗橋みなみ限定イラスト商品券販売」
栗橋町の学生が「栗橋みなみ」を使って町おこし企画を立案している、という話は「鉄道むすめ」関連の話題を探している時に知った。学生が「見て」いたのは恐らく鷺宮町(「らき☆すた」の聖地)の成功例だろう。でも「らき☆すた」並みの地域活性化策が簡単に見つかるほど、今の状況は甘くない。展開の仕方を間違えると「かんなぎ」で地域振興に失敗した某所のようになってしまう恐れがある。そういう事例があるんで、商工会側がその効果に疑問符を抱いてこの話は立ち消えする、と思った。ところがこれが商工会公式サイトで大々的に宣伝されている。乗っかってしまったんだなぁ。ちゃんと「着地点がある」ということを認識しているんだろうか? ちなみにこの商品券、イラストはみぶなつき先生ではなく宙花こより先生、それも新規書き下ろしイラスト。またおいしいネタを投下してくれる……。


一方、三陸鉄道。10月26日に開かれた臨時株主総会の席上で山口和彦三陸鉄道社長が決算の見通しを述べた。

 第三セクター三陸鉄道山口和彦社長)は、26日に臨時株主総会と取締役会を開き、09年度の決算の見通しを発表した。経常損失は1億4310万円の赤字の見通しで、燃料の軽油価格の下落などで、昨年12月に作った経営改善計画より赤字は1716万円少なくなる見込みだ。
「三陸鉄道、09年度決算 赤字見通し」asahi.com2009年10月28日付

いくら「久慈ありす」絡みのイベントが盛り上がっていようとも、赤字決算ではまだまだ先行きは暗い。ところがそれでも「久慈ありす」を利用してイベントをやるぞ、と県知事自身が発言している*5。そしてそういう状況も全部見た上で「手を挙げている」鉄道会社がまだいる。


前述「久慈町公式サイト」上で公開中の「秋のさんてつ祭り」リポートは、このような文面で締めくくられている。

さんてつ祭りで印象に残るのは「多くのファンが三鉄を支えている」ということです。駆けつけてくれたファンは北海道から長崎県まで、もちろん地元からも多くのお客さんで賑わいました。また、会場に飾り付けてあったバルーンアート、実はファンの方が自費(!)で提供くださったものなんです。こうしたファンの支えがあって25年間走ってきた三陸鉄道。地域住民と全国のファンのため、これからも走り続けてくれることでしょう。

「地域住民と全国のファンのため」を思うなら、「鉄道むすめ」シリーズの終焉という「着地点」だけは見据えねばならぬ。着地点を見誤ってだらだらと続ければ、ネットとマスコミから「固執しすぎ」と叩かれるからだ。だがその「着地点」が必ずどこかにあるということを念頭に置いた上で、「便乗商法」みたいにこの「お祭り」に乗っかるっていうなら話は別。人気が落ちた時点でさっさと降りてしまえばいいからだ。ただし本気で効果を持続させたかったら、もっと「参加者」を増やさねばならない。
かつて琵琶湖で開催されていた「鳥人間コンテスト」と一緒。あれは「要請されたから」機体を製作して来ていたわけじゃなく、「飛距離という記録を残したいから」機体を製作して来ていた。「参加者がいた」から続いたのだ。これは「鉄道むすめ」シリーズも同じ。「ウチの制服で出してくれ」と言う鉄道会社がなくなった時点で終わる。逆に言うと、「ウチの制服で」と言ってくる鉄道会社がまだいる現在の状況下で、「シリーズ発売打ち切り」の可能性はほぼゼロ。ならば今のうちに「発売済み」のところが「未発売」のところへ話を持ちかけて誘えばいい。本気で「この祭りの効果」を持続させたければ、やるべきはそこ。恐らく「オリジナルキャラ」の投入よりも短期間で効果は上がるだろう。


どうせ不況と「高速道路料金一律1000円」の影響で、どこもかしこも乗客数が伸び悩んでいるだろうから、この際一度作ってもらえばいい。作ってもらって売れなきゃやめりゃいいだけの話。そういう「思い切った」ことが出来る鉄道会社があとどのくらい現れるかなんだけど、さて一体どこが次に言い出すのかなぁ。

*1:「秋のさんてつ祭り」(matsudastyle_B‐2009年11月2日)

*2:「秋のさんてつ祭りが開催されました!」久慈市公式サイト「環境・生活」カテゴリ下「鉄道」より「秋のさんてつ祭りが開催されました!」

*3:元からその程度のレベルだけど

*4:「宙花こより」つながり

*5:久慈ありすはウチの嫁」発言:前述「Exciteコネタ」記事