テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

リニア建設問題:長野県民はこの問題から置き去りにされてます。

前回の記事:id:tetsumogura:20090616

長野県内の自治体は「我田引水」を実行中。

 リニア中央新幹線の建設問題で、県議会は1日、諏訪・伊那谷を経由する「Bルート」の実現を求める決議を、開会中の6月定例会では見送ることを決めた。県内の自治体間でもルートや整備のあり方に温度差が生じており、「時期尚早」などと異論が続出。各会派の調整がつかなかった。

リニア中央新幹線:県議会、Bルート決議見送り 自治体間に温度差 /長野」
毎日.jp 2009年7月2日配信記事

記事を見つけたのは昨日(7月2日)付け中日新聞朝刊。全文を読んで「何ですかそれ」と思った。どこが「慎重な検討を要求」し、どこが「決議は必要ない」と言い出し、どこが決議に賛成したのかは……記事を読んでいただくとして、肝心なのはリニア中央新幹線の建設を推進するにあたり、県議会の会派間でも意見が完全に食い違っていること。このまま行けば県議会と各市町村議会の間で意見が分裂し、結果的にJR東海の言いなりにされる、なし崩し的にCルートで建設される公算が高い。そうなると一番困るのは誰なんだ? 議会関係者でも各自治体の首長でもない。県民、地元自治体の住民だ。

ルート選定に関する決議案は全部、市民側からの提出ではない!

 飯田市議会と伊那市議会は6月定例会最終日の22日、それぞれリニア中央新幹線の早期実現に関する決議を行った。焦点となっているルート問題をめぐっては、伊那が諏訪・伊那谷を通る「Bルート」実現を目指すとした一方、飯田はルートには直接触れず、リニア飯田駅の設置実現への決意を表明するなど、両地域の立場の違いをあらためて示す内容となった。
「飯田・伊那両市議会が「リニア決議」 立場の違い あらためて」
信濃毎日新聞(信毎Web)6月23日配信記事

この記事をよく見てみると、飯田市議会の決議案は「共産党を除く4会派が共同で提案」、伊那市議会の決議案は「市議会交通対策特別委の委員8人のうち7人が共同提案」したもの、と書いてある。市民からの提案ではなく、市議会もしくは市議会の委員会から出されたもの。じゃあ各市民の意見ってどうなのよ。
『鉄道旅行とは「巡る」こと。』6月15日付けにて、リニア建設問題と次期支援戦闘機F-X選定問題は似ているんだよ、結局「欲しければそれなりに金を出せ」なんだよ、と書いた。次期支援戦闘機F-Xの選定について、アメリカ側はF-22ラプターではなく、日本がプロジェクトに参加していない「F-35ライトニング2」を推薦している。プロジェクトに参加していないのに「推薦する」ということは、「先に欲しければそれなりの費用負担をしろ」ということだ、と。そしてこれはリニア新幹線も同じ。中間駅の建設費用は地元自治体の負担を求める、とJR東海側は説明していた。ではその購入費用、建設費用、最終的には誰が払うんですか、と。
どちらも結局税金から拠出するんでしょ?
一番肝心なのはそこなんだけれど、それを県がきちんと県民に説明していない。メリットとデメリットをルートごとに県民に説明して、その上で県民の意識調査を県がきちんとすべき。そのデータを完全に公表して(もちろん作為なしで)、それからルート上の各自治体が誘致活動をすればいい。使うのは誰なんですか? そこの議論をまずしないと、JR東海のいいようにされますよ、と。
これで、もりくち氏が自身のブログ「とれいん工房の汽車旅12ヵ月」2009年6月19日付で語っておられる通り、迷走しているのは政治家と経済団体の連中と地元のマスコミだけだと分かった。なんとも馬鹿馬鹿しい。


時事通信の7月2日付配信記事には、JR東日本社長が7月2日の記者会見で「品川駅構内で6月中旬からポーリング調査を始めた」と公表したとある。長野県のどたばたぶりはお構いなしといった感じだ。一方でJR東海労働組合JR東海に「リニア新幹線構想の中止」を求める申し入れをしたそうである(「JR東海労ニュース」No.1304)。JR東海労組が言ってJR東海側が聞き入れるわけないんだが、沿線自治体の住民が駅建設費用の詳細を聞いて「建設反対」に転じたら、これまた面白いことになる。推進にせよ反対にせよ、県民側から大規模な行動が起こることを期待したい。