テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

「リニア新幹線の建設」と「次期支援戦闘機F-X選定」、根本は「欲しければ金を出せ」。

8日にJR東海社長がリニア中央新幹線建設促進国会議員連盟などの合同総会の席上において、「リニア新幹線の駅は一県に一駅が適切」と発言した。これを受けて早速通過予定の自治体は候補地選定の作業に入ったようだ。しかし、だ。忘れてはいけない。「駅の設置には自治体が設置費用を出すことが条件」と、JR東海社長は言っている。
このネタで書こうとしたら、早々ともりくち氏に出されてしまった。


リニア中央新幹線:1県1駅 戦略会議開催へ 県、誘致から地域活性化目指す/岐阜(毎日新聞
http://mainichi.jp/area/gifu/news/20090610ddlk21040005000c.html
リニア中央新幹線JR東海社長「1県1駅」 設置費は地元負担(毎日新聞ニュースセレクト)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090609ddm003040094000c.html


この一連のニュース記事を見て、F-X選定問題でアメリカ側が「F-22は売れない、F-35を候補として推奨する」と言ってきたのと似てるなぁ、と思った。

*次期主力戦闘機、F35を日本に推奨 米国防総省報道官(日本経済新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090609AT2M0901009062009.html

リニア中間駅と次期支援戦闘機、どちらも最終的には「欲しいなら金を出せ」。

まずはリニア新幹線。中間駅の建設については、軌道部分以外の駅舎・ホーム等の設置にかかる費用を自治体が負担するよう求める、とJR東海社長が発言した。ところがその具体的な費用については、「(各自治体に対し)個別に説明する」として、大まかな費用すら明言を避けている。これについて、日経BP公式サイト内「ケンセツ的視点」で、「リニア新幹線の中間駅はどうなる?」と題して連載コラムが組まれていた。一読されたし。

リニア新幹線の中間駅はどうなる?』(日経BP社公式サイト内「ケンセツ的視点」)
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/knp/column/20090129/530020/?P=1/527877/

「中間駅の建設費用は、周辺整備と合わせ200〜300億円が必要」とコラムには書いてあるが、地下駅だと実際にはこれ以上かかる可能性が高い。地下駅の参考になるだろうリニア名古屋駅の建設費用について、JR東海社長が明言をしていない、というのがヒントだ。土地取得にかかる費用はともかく、地上へ出るためのエスカレーター・エレベーター設置コスト、防災設備、防犯設備、排水設備、駅舎、ホーム及び列車通過時の防護装置……ホームを設置する場所が地平面から下がれば下がるほどそれらの設置にかかる費用は膨れ上がる。百億単位どころか一千億円を越える可能性も十分ある*1。これを駅周辺の自治体でどうやって負担するつもりなんだろう。何よりも、示される建設費用(負担額)は妥当な額なのか? 比べる「相手」がないと参考にならんだろうに。


さて一方の「次期支援戦闘機F-X」。アメリカ側はF-22ラプターの調達は終了し、日本に対してはF-35ライトニングⅡを推薦するとした。ところがこのF-35ロッキード・マーチン社がまだ開発中の機体で、かつ出資すれば計画に参加できる「国際共同開発機」となっている。出資して計画に参加すれば購入できるし自国企業でのライセンス生産も可能だが、日本はこのプロジェクトには参加していない。時事通信時事ドットコム」の「軍用機ミュージアム」では、日本が導入できるのは2015年以降としている。

『軍用機ミュージアム【8】F35 国際共同開発機』(時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/v2?id=20090603warplane_museum_08

この機体、個人のブログなどで触れられている通り、各国からの要求を満たすため開発が難航し、4月21日にようやく量産型1号機(AA-1)がフロリダ州のエグリン空軍基地に到着した程度なのだ。これからアメリカの各基地に配備されるという段階であり、それからプロジェクト参加各国へ引き渡す。その順番を超えてまで日本に先に引き渡すことは絶対ありえない。在日米軍基地の移転問題で費用を負担しろと言ってきた国だ。「それでも欲しければ、生産にかかる費用の相当額を負担しろ」、そう言ってくるのはもう分かりきっている。「リニア新幹線の駅建設費問題」と根本は同じだとしたのは、どっちも「金を出せば売ってやる、造ってやる」だからだ。だから言ってやる。関係者全員、落ち着け。考えろよ! それ造って、買って、一番影響が及ぶのは誰なんだよ。買ってから、造ってから何か重大な欠点があったことに気づいても、もう遅い。失ったものは戻ってこない。

F-35の1号機、フロリダ州のエグリン米空軍基地に到着」
http://www.technobahn.com/news/200905052109

南アルプスの地下水脈」を伏流水として利用する日本酒醸造元への被害想定額はいくら?

次期支援戦闘機F-Xについては私の趣味の範囲外なので明言は避ける。個人的にはデルタ翼のヨーロッパ製機体で十分と思うんだが、まぁその辺はごにょごにょ。それよりも問題は、リニア新幹線についてJR東海が「大前提」とするCルートが、南アルプス山脈の下を貫通するということだ。実はこの南アルプス山系の水脈を利用して商品を売り出しているところがある。水そのものを売り出しているところにも影響は及ぶだろうが、一番大きいと予想するのは、その水脈を伏流水として仕込み水に使う日本酒の蔵元だ。もし使用している井戸の水脈が工事で影響を受け水質が落ちれば、仕込み水としてはもう使えなくなる。井戸が新たに掘れなければ、「廃業」ということも十分ありうる。この廃業に伴う損失補てん額、そして従業員や杜氏への失業補償、再就職先の斡旋など、その費用は一体誰が払うのか。まさかとは思うが、塩尻甲府地区の場合はワインの原料となるぶどうの生育に影響が及ぶかもしれない。その賠償が生じた場合の金額負担は?

これ、嫌な予感がするんだよね。JR東海が地下何メートルを掘るのかも分からないからこれ以上の明言は避ける。けど、もし日本酒の蔵元がリニア新幹線の開業により大量に廃業することになってしまったら、少なくとも長野県と岐阜県、そして南アルプス山系の伏流水が地域によっては出る静岡県の県民は、
酒蔵を大量に潰して、何のためにリニアを通したの?
と、他県民から蔑まれることになる。「どの地下水脈にどのくらい影響が及ぶのか」、そのデータがJR東海から正式に出されるまでは、リニア新幹線が通る予定の県の住民は「みんなで万歳」しちゃダメですからね。もちろんだけれど、名古屋市民も万歳三唱は出来ないよ。理由は分かってますよね。


リニア新幹線の建設は、通過コースの選定から慎重でないと、得られるものよりも失ってしまうものの方が大きくなってしまう……と思うのは私だけではないはず。

*1:某ブログの記事に対するコメントに「いくらくらい」と書いてあったが、ブログそのものの運営が個人なのでリンクは割愛。