テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

車両や駅舎を保存するのも結局は「費用対効果」

katamachi氏のブログ記事「阿久根市ブルートレインを宿泊施設にしているNPOの財政危機と車両の保存の難しさ」を一通り読んだ。

思い出したのは、旧・布袋駅舎保存問題。

旧・布袋駅舎の保存が一部の内外装にとどまったのは、移築するとなると費用が莫大になるから。

 名古屋鉄道の現存する駅舎としては最も古く、鉄道高架化事業で取り壊しの危機にある犬山線布袋(ほてい)駅(愛知県江南市)の保存を求め、住民有志約30人が11月に「布袋駅舎保存会」を設立することになった。大正時代の面影を残す駅舎の一部を譲り受け、展示するための施設を整備したい考え。「全国の鉄道ファンにも協力を呼び掛けたい」としている。
(中略)
 街づくりに取り組んでいる地元の市民団体「ほていコミュニティ協議会」が実施したアンケートで、駅舎の保存を望んでいる住民や駅利用客は多いと分かったものの最大のネックとなるのは費用の問題。同協議会の部会が独自に試算した。
 それによると、駅舎全体を別の場所に移築するには約6000万円かかるという。車寄せに残る社紋や天井、ベンチなど一部を名鉄から譲り受けるにとどめ、それらを移築した施設を整備する場合、800万円程度に抑えられることが分かった。
名鉄犬山線の布袋駅舎「保存会」設立へ中日新聞「鉄道特集」より抜粋)

結局ほていコミュニティ協議会は「部分保存」することを決めた。しかし本当なら……あの駅舎が名鉄の全駅中一番古い駅舎なら、「登録文化財」とする方法もあったはずだった。それを名鉄が取らなかったのは、移築及び保存状態の維持にかかる費用と保存した場合の効果を比較して、あの駅舎を丸ごと残しても何の利益も得られないと判断したからに他ならない。そうでなければとっくの昔に名鉄江南市に対し、「登録文化財」指定に向けて何らかの働きかけをしていたはずだ。今、旧・布袋駅舎は跡形もなく消え去っている。

結局は「費用対効果」の問題だと、いすみ鉄道鳥塚社長が言っている。

現在、いすみ鉄道ではJR西日本から国鉄ディーゼルカーキハ52型を導入する計画でおりますが、この車両の導入には約3千万円の経費がかかります。
このディーゼルカーを走らせても、写真を撮りに来る人たちばかりが喜んで、鉄道会社の収入にはならない、という意見も私の周りからは多く聞かれますが、私はそれでも鉄道好きの皆さま方に喜んでいただければよいと考えております。
ただ、やはりビジネスですから、そこから収益を上げなければ立ちいかなくなるのは明らかで、そこをどうするか、つまり、写真だけ撮りに来る人たちにどうやって会社に貢献していただくかの方法を考えております。

具体的に実現可能な案をお待ちいたしておりますので、プランがおありの方は是非いすみ鉄道までFAXにてご意見をお寄せください。

ただしあくまでも実現可能なビジネスプランに限ります。
お手紙、メール等をいただく皆さまへお詫びいすみ鉄道社長ブログ2010年10月13日付)
(途中のFAX番号記述部分については割愛)

鉄道車両を保存するだけなら資金を集めれば出来る。しかしそれをどういった形で維持し、それにどれだけの費用がかかり、そしてその結果どれだけの見返りが得られるのか、社長はその辺を明確にした上で提案してくれ、といすみ鉄道社長は言っている。そう、全ては「費用対効果」なんだ、と。そしてそれは「法人格」である以上「NPO法人」にも同じことが言える。その「効果」がどれだけなのか、それを見誤ると阿久根市NPO法人と同じ悲惨な結果が待ち受ける。
「残す」という作業には「その状態を保つ」という「維持作業」が必要だ。そして「維持作業」には時間と労力と資金が要る。「維持作業」をした結果、どれだけの価値がそれに生まれ、どれだけの効果が現れるのか。悲しいかな、鉄道車両や建物の保存運動なんてそういう陳腐なところに行き着いてしまうんだ、と書いて今回の記事は終わり。ご清聴ありがとうございました。