テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

観光列車=トロッコ列車とかSL列車?

観光鉄道としてお客様に楽しんでいただくための列車として、誰でも思い浮かぶのが 「トロッコ列車」 だと思います。

いすみ鉄道でも沿線の皆さんからは 「トロッコ列車」 という意見をよく耳にします。

私もトロッコ列車を考えないでもないですが、いすみ鉄道トロッコ列車を導入する場合にクリアしなければならない問題が二つあります。
「トロッコ列車について」いすみ鉄道社長ブログより)

その2つの問題点とは

  • 終端駅での機関車の付け替え(いすみ鉄道の終端駅はストップ線で、機関車付け替えが可能な線路配線ではない)
  • 運用の効率化(平日に走らせることが出来ない車両を保有するのにかかる費用)

だそうで、それがトロッコ列車を運行するに至らない理由なんだそうだ。運用の効率化うんぬんはもちろんだが、終端駅がいずれもストップ線というのは、確かにトロッコ列車を運行する上ではかなり「痛い」。

機関車を付け替えるにはそれなりの線路設備と金が必要です。

私自身の持てる知識で少しだけ説明しておく。
鉄道の線路配線を図式化したものを「配線図」という。その配線図で社長の言うところを簡単に書くと、以下の図のようになる。灰色で塗りつぶされた四角形はホーム、線は敷設されたレール、線の先端についている短い縦線はそこで線路は行き止まりであることを示す。列車は左側から入って、左側から出て行くものと想定している。

機関車を含む鉄道車両は基本的にレールのないところは走れない。そして「トロッコ列車」は営業運転をする場合、機関車で「牽引」するから機関車は列車編成の最前部に付くのが普通だ。でなければ機関車の運転士が前方を確認することが出来ない。上の図で一番上(A)や真ん中(B)だと、機関車が列車編成の最前部に移動することができず、終端駅で折り返して運転することが出来ない。ところが一番下(C)なら編成の最前部に機関車を付け替えることが出来る。実はC図で2本の線の間に引いた斜線と、その右側に伸ばした(波線で切ってあるがその先に延びている、という意味)線がミソ。線路と線路を斜めにつなぐ線を「渡り線」と呼び、これを隣り合う線路の間に設けると、互いのポイントをきちんと切り替えることで、一方の線路からもう一方の線路へ列車を移動させることが出来る。実際には

  • 機関車を切り離し、
  • 一旦ホームを過ぎて線路の先まで機関車を移動させ、
  • 2本の線路の間に設けられた渡り線(上図Cでは線の間の斜線)を経由して、反対の線路に移動させ、
  • Y字分岐を通り越えた先で機関車を停止させ、
  • 逆走(後進運転)で編成に連結する

とすればいい。社長のブログにある、「ストップ線」云々というのは、この線路の配線構造を言っている。
問題はそれだけのものを作るのにかかる費用だ。以上で説明した通り、機関車の折り返しには渡り線の設置だけでなく、接続するポイントの先にも線路を延ばす必要がある(でないと機関車が折り返せない)。線路の設置費用だけでなく用地取得のための費用、そして安全装置(ATS地上子など)の設置費用も必要になるから、相当な額を払うことになるだろう。しかも、平日はまず運用に就くことのないトロッコ列車の保守にかかる費用を、運賃収入からさらに毎年工面しなければならない。なるほど、確かにそれは正論だなぁ。
だから社長は

  • 一両で走行できる車両
  • 平日の通常運用にも投入できること(共通運用が可能な車両)

ならば、いすみ鉄道にも観光列車を走らせることができる、と言っておられる。だったらトロッコじゃなくてもいいんだよね……と考えて、思い出したのが土佐くろしお鉄道http://www.tosakuro.co.jp/)の9640型展望デッキ車両だった。確か海側サイドが展望デッキになっていて、高速走行区間及び悪天候のとき以外は立ち入りが出来ることになっていた。ていうか、「線路配線無改造・平日の通常運用にも投入可能」という条件で観光列車を導入するとなると、「普通気動車改造車両」しか導入できないと思うけれど。

別にわざわざ導入しなくても……

普段乗るのは沿線住民、その沿線住民がいなくなったらどうしようもない……という話は毎回のようにしてきた。いすみ鉄道もおんなじ状況なんだろうな。でも今、「ホタル・ウォッチング・トレイン」や「大多喜駅構内のムーミングッズ売店」など、新規に列車を導入することなく売り上げを伸ばす方法を実行し、それが実を結びつつある。
ならばそれでいいんじゃないの?
下手に導入しても、それで運賃収入が増えなきゃ意味がない。新規列車の導入ではなく、まずはいすみ鉄道を県内外に宣伝することが先じゃないのかな。たぶんまだ全国的には知られてません。時刻表には確かに何度か広告は載ったけど、時刻表を買う人間がどれほどいるかを考えればまだ甘い。全国紙に取り上げてもらったり、あるいは「ぴあ」とか「ウォーカー」とかに売り込んだりとか……いくらでもやれることはあると思うんですがね。観光列車とかは「全国的に知られるようになって」からでもいいんじゃないかな。でないと観光列車導入に伴う費用が負債となって、一発で会社清算ですよ……という妄想ヲタ話をして本日はおしまい。


ああ、そういえばこっちではJR東海ツアーズが「飯田線秘境駅探訪ツアー」を発売して、あまりに好評だったからJR東海ツアーズ以外の旅行会社でも発売することになったそうな。
(詳細:http://jr-central.co.jp/news/release/nws000519.html
何でもネタにしてそれで運賃収入を得られればそれでいいのか、というと何か違う気がするんですが……。