テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

ホテルも仕掛けるテツホイホイw

中日新聞の記事を見てはじめて知ったんだけれど、
「鉄道鑑賞プラン」
なんて設定してたんですか、名鉄イン
http://www.m-inn.com/pc.html


このプランは業務提携する西鉄イン京急EXイン、名鉄インの3社が共同企画の一環として始めたもので、要するに鉄道撮影に適した部屋を確実に提供しますというものだ。このプランを最初に始めたのがどこだかは全くわからない。
*「西鉄イン」ホームページ
http://www.n-inn.jp/
*「京急EXイン」ホームページ
http://www.keikyu-exinn.co.jp/
MSN産経ニュースの同記事ソースへのリンク、および中日新聞「オピ・リーナ」関連記事ソースへのリンクを以下に出しておく。
MSN産経ニュース「ホテルの鉄道撮影プラン人気 絶好のアングル、需要掘り起こしなるか」
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/090108/sty0901081853005-n1.htm
中日新聞Webサイト「オピ・リーナ」より「鉄道写真の撮影に最適 名鉄インなどが宿泊プランを企画」
http://opi-rina.chunichi.co.jp/topics/20090114-2.html


一般的にホテル側は、部屋の窓がどの方角にあるかまでは調べていても、その窓から線路や駅、そして列車まで見えるかなんていちいち調べていない。だから「どの部屋に泊まれば列車が撮影できるか」は、どの部屋がどの方角にあって窓はどの方角にあるかを宿泊者自身がホテル側から聞き、その上で宿泊者自身が地図上で線路や駅との位置関係を調べる必要があった。ところがこのプランの場合、導入したホテル側が窓越しに列車が撮影可能な部屋を調べている、という点がポイントだ。だから宿泊者はこのプランで予約(ホテルによってはフロア及び方面を指定)するだけで、「列車が見える、撮影できる」部屋が確実に確保される、というわけ。
非テツにとっては「何それ意味あるの?」なんだが、テツにとって、特に撮りテツにしてみれば、宿泊した部屋から列車の撮影ができるというのは斬新的で、非常に面白いプランと考えるだろう。これは考えたね、発案した人を褒めてあげよう……と思ったが、いかんせん、今のご時世は不況の真っ只中。記事の内容をそのまま受け取って、「すごいプランを出してきたね」って書くわけにはいかない。三歩ほど引いてあえて「ツッコミ」を3つ入れてみる。

ツッコミ1:鉄道ファンをも当てにしなければならないほど、客室稼動率は落ち込んでいる。

一番のツッコミどころは、このプランが「鉄道ファン向け」であるということ。先に語った通り、この景気後退(不況)の中において、ホテル業界も深刻な利用者不足に陥っているはずである。そんな状況が予測できる中でのこの宿泊プラン発表……。鉄道ファンの利用を当てにしなければならないほど、各ホテルの客室稼動率は落ちていると見るべきだろう。しかも、プラン発表及び予約開始が12月。年末年始に向けて「他のホテルチェーンと差別化できるプラン」を必死に探していた可能性はある。
非鉄道ファンにとってはとにかく快適に、かつできるだけ安い料金で宿泊できることが重要である。列車が撮影できようができまいが関係ない。だからこんなプランを出すこと自体が「普通じゃありえない」といえる。

ツッコミ2:鉄道ファン、そんなに簡単には泊まらない

西鉄インに追従した他のホテルの利用状況を見ると、「大好評」と言えるほどではないことがわかる。


12月19日から始まった京急EXインのプランは、「1日2室限定」という条件が付くものの、「非売品の京急グッズ付き」で予約時に希望の部屋を指定することができる。このプランを提供するホテルの場所も京急線のすぐそばにあり、撮影環境としては申し分ない。ところが京浜急行ホームページ上で発表された「2009年1月9日付報道発表資料」によると、これまでの利用は8件の宿泊実績、22件の予約だったそうだ。ここで問題。このプランは週末限定プランか?
プラン提供開始は12月19日、報道発表資料の公開は翌年1月8日。データ集計を前日の1月7日までとすると、平日および年末年始をすべて含めて稼働日数は20日。全部の稼働日でこのプランの予約数が埋まれば20×2=40件入ることになる。だが実際の予約は8+22=30件。1日1件の予約申し込みとしても明らかに足りない。おまけに実際の宿泊実績はたったの8件。駅至近、立地かなりよしの「京急EXイン」ですら、だ。
京急ホームページよりプレスリリース2009年1月8日付
http://www.keikyu.co.jp/corporate/press/press_files/090108_1.shtml


もっとお粗末だったのが名鉄イン。12月20日より「名鉄イン知多半田駅前」と「名鉄イン刈谷」の2施設でプランの提供を始めている。「中日新聞」朝刊経済面に掲載された記事によれば、「名鉄イン知多半田駅前では昨年11月以降22件の予約があった」*1そうである。しかしここで着目すべきは、プランの提供開始が7000系の定期運用最終日前((7000系定期運用の最終日は12月26日))であったということだ。そしてその22件の予約はいつの宿泊予約だったかという点が、中日新聞の記事では明かされていないことにも注意したい。
7000系の定期運用最終日当日、一番最後の運転となった「普通岩倉行き」は岩倉駅到着時刻が22時8分だった。そして岩倉駅から回送電車として出発したのは22時28分頃だったと記憶している。ところがこの後、22時38分発に犬山線経由の急行内海行きが出ており、この急行は知多半田駅に停車する。そう、少なくとも名鉄イン知多半田駅前には名鉄線経由で戻れたはずだった。それがもしこの日の予約に結びついていれば、ホテル側は「してやったり」だっただろう。しかしこの予約実績なら予想が外れ、見事にこけた可能性が高い。関東方面からの遠征組は快速「ムーンライトながら」という最終手段があるからな。まだまだ京急EXイン、名鉄イン共にアピール不足だ。


名鉄インの関係者、西鉄イン博多から「何でテツが150人も釣れたか、その理由」を聞いてこい。

ツッコミ3:「名鉄イン刈谷の3月13日」がコケたら全て終わり。

最後のツッコミは京急EXインや西鉄インではなく、名鉄インのことに絞って入れる。
名鉄イン刈谷(以降、「刈谷」)」のプランは「名古屋方面向き」か「豊橋方面向き」のどちらか一方が指定でき、いずれの側からも名鉄三河線に加え、東海道本線の列車が撮影可能だ。一方、「名鉄イン知多半田駅前(以降、「知多半田駅前」)」の場合は名鉄知多半田駅に面した2階から8階までの客室全てが対象で、さらにドリンク一本サービスつき。とどめに「昼12時から翌日の昼12時まで24時間滞在可能」を謳っている。
実は「刈谷」の方はこの記事を投稿した現時点で、1月17日から1月22日までこのプランの対象客室は満室になっている*2。一方で、知多半田駅前」の利用状況は散々である。2月1日以外はプラン対象の全客室において空きがあるのだ。これは私の推測だが、3月14日のダイヤ改正で特急「はやぶさ・富士」が廃止になり、さらに快速「ムーンライトながら」及び「同列車の臨時」が全部臨時列車に格下げとなるため、客室から事前に撮影しようという撮りテツが「刈谷」のプラン対象客室を予約したのだと思う。あるいは団体さんの利用? まさか……。
ツッコミ対象ポイントは、対象客室が埋まり始めている理由はもう明白なんだから、「刈谷」も期間限定で「1ドリンク付き・チェックアウト12時まで」ってすればいいだろうという点。実は「知多半田駅前」よりも「刈谷」の方が、東海道本線経由の列車も撮影できるため、撮影ポイントとしては好条件である。おまけに3月は「刈谷」にとってのビッグチャンスが来る。一世を風靡した特急「はやぶさ・富士」と快速「ムーンライトながら」という二つの列車が、それも同時に時刻表の本文ページから消える、という大イベントがあるのだ。快速「ムーンライトながら」はJR刈谷駅に「停車」し、特急「はやぶさ・富士」もJR刈谷駅を「通過」する。そして「刈谷」は名鉄刈谷駅のすぐ横にある。こんな大イベントはもうあと何回もやってこない。鉄道ファンを甘く見てるとコケるよ、名鉄イン刈谷支配人。

鉄道ファン向けの宿泊プランは、「テツヲタすら驚くような内容」を盛り込まないと利用してもらえない。

この3社が共同で出した「撮影に適した部屋取ります」プランは、親会社の鉄道路線沿線にあるという立地条件を生かしたもので、他にはなかなか真似できるものではない。さらに今回は「このプランが好評である」と、新聞社が記事のネタとして取り上げてくれた。だからこれから徐々に鉄道ファン(特に撮り鉄)が集まると思う。しかし、これが「続けられる」という保証はどこにもない。鉄道ファンの動きは実は結構流動的だったりする。彼らは特に、「新車投入、臨時列車運転、列車廃止、路線廃止」の4つの場合によく動くからだ。だからそんな彼らを客として今後も惹きつけるには、「列車が見える部屋を優先的に取ります」だけではだめ。親会社が鉄道会社なのだから、親会社の業務に連動するプランを打ち出すことがやっぱり必要になる。グッズつけるにしても、「車庫公開イベント限定でしか出ないグッズつけます」とやれば反応はもっと増えるだろう。いや、名鉄の場合、奥の手がある。

「金曜・土曜及び祝日の前日限定、検査場の中を案内します、保存中の7000系間近で撮影できます」

なんてやったら、対象日は全部満室御礼になるだろう。そこまでやらんと思うけどな。


果たしてこのプランは定着するのかどうか。3年続いたら「テツホイホイ」カテゴリから「このネタは大真面目」カテゴリで語ってあげることにしましょう。3年後が楽しみだなぁ。いや、その前に3月13日に「名鉄イン刈谷」に予約が(以下略)。

*1:恐らく予約開始が11月から、ってことだろう。

*2:3月28日から30日までは全部が満室表示だが、なぜだ?