テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

手力雄神社の火祭り

手力駅に降り立つ。
はっきりと分かる、駅に近付く鐘の音、そして爆竹の轟音。左を向くと、近付いてきたのは御輿と鐘と、爆竹を手に持った男たち。いったい何が始まるのか? 
硝煙の匂いと参道に積もった燃えカスを頼りに会場へ。そして、行った先で見たのは何とも奇妙な光景だった。
そう、境内から天空に突き出す行灯。
よく見ればその下にナイアガラ花火でよく使う筒がぶら下がっている。
例のあれはこれかとすぐ分かった。
境内に入る前に参道へ繰り出し、ちょっと神輿を見ていく。

神輿が境内に入ると

御輿に取りつけた花火が火を吹き、足元では爆竹が大量発火。
綺麗だが一歩間違えると大惨事。
長崎の精霊流しを思い出したが、あんな程度ではない。
うまく撮影できず申し訳ないが、相当な迫力であることはお伝えしておく。

しかしこれはまだこの祭りの始まりでしかなかった。
この後、とんでもないものを目にしてしまう。
(続きはこの後。)

この御神灯も始まりでしかなかった。

全飾り神輿が神社本殿でお祓いを受けると、いよいよ祭りがスタートする。
祭礼主催者の挨拶があった後、各地区ごとに一本ずつ立つ御神灯が順に灯されて行く。
興味深いのは、その着火方法だ。
御神灯は長い木の柱に取り付けてあり、高さは十数メートルはありそうだ。
当然ながら、このままでは御神灯自体に直接着火できない。
そこで、柱を支える綱とは別にもう一本灯籠から綱を張り、その綱に「豊川進雄神社」で見られる綱火と同じ物を通して、火を着けた後に綱の下を走らせる。
(どの位置から綱を張っているのかまでは確認できなかった。)
綱火が御神灯の元へ辿り着くと、近くにある導火線に火の粉がかかり着火、導火線から各灯籠に火が回り点灯するという仕組みだった。
この仕組みが故に、風向きによっては火の粉が導火線にかからず、うまく着火しない。
(一発着火したのは、えっと……?)
着火された後の御神灯を撮影したので、画像を下に掲示する。
夜景モード付デジカメならもっときれいに撮れるはずである。

ところで御神灯の下には火薬筒が吊り下がっている。これにも導火線が付いていて、各灯籠につながる導火線に連結されている。これにより、灯籠への着火とほぼ同時に火薬筒にも着火し、下へと火の粉が吹き出す。


火薬筒や灯籠にもいろいろ仕掛けがされていて、ただ火薬筒から火の粉が吹き出すだけでなく、音を出すような(爆竹?)仕掛けがしてあったり、灯籠に使う発炎筒にも変色する仕掛けが仕込んであったり、と。
でもこれもまだまだ始まりでしかなかった。

滝花火で神輿の花火に火をつけるなんて!

圧巻はこのシーンだ。画像を先に出す。

上で火の粉を吹いているのは、「滝花火」と呼ばれる吹き出し花火。
手筒花火のような火薬筒を何本か束ね、柱から吊り下げてある。
これにもやはり導火線が接続されていて、御神灯と同じ方法で点火していた。
(導火線で直接着火していた地区もあったような、なかったような?)
滝花火に火が回ると火の粉を吹き出し吹き出した火の粉は重力で下に落ちる。
下では新たな吹出花火を取り付けた神輿が待ち構えていて、
降り注ぐ火の粉により吹出花火に着火。
滝花火の火の粉と神輿から降り注ぐ火の粉を、担ぎ手たちが頭から被る。
さらに、この写真には写っていないが、足元では爆竹が大量に爆ぜている。
……と、この構図が上の写真なんだが……理解してもらえんだろうなぁ。


実は滝花火本体にも仕掛けがしてあって、今年は

  • 滝花火の着火を見計らって、綱の下に吊るした火薬筒に導火線で着火。「ナイヤガラの滝花火」のごとく、火の粉が下に降り注ぐ。しかし、その下には祭りの参加者たちが待っていて、結局全員が火の粉を被り狂喜乱舞。
  • 滝花火の着火を見計らって、綱の下に吊るした火薬筒に導火線で着火。ここまでは上と一緒。しかしその火薬筒、に見えていたのは実は全部爆竹だった! 轟音響いた後、本殿近くにいた私(及び観客)は風の影響でみんな燃えかすまみれ。
  • 滝花火が火の粉を吹くと同時に、綱の下に吊るされた灯籠に着火。大量の火花を吹いて関係者の待つ飾り台上に降りてくる。次の瞬間、台上で手筒花火が披露される。まさか、降りてきた灯籠に手筒花火が仕込まれていた!?

この祭りは奇祭だが、普通の「奇祭」ではない!

  • 灯籠点火中、降り注ぐ火の粉で木の枝が燃え、消防団出動。
  • 消火で水を被ったはずの灯籠に、滝花火の火の粉がかかって突然発火する。
  • 神輿が降り注ぐ火の粉で燃え、上の飾りが丸焼けになってしまう。
  • 神輿に取り付けた吹出花火が突然暴発する。

これだけの事態が発生しても、それでも祭りは止まらない。
手筒の一斉着火による「手筒奉納=立火棚」、
そして「山焼き」と呼ばれる大仕掛けが奉納されるまで!
これは確かに奇祭だ。
初めて行く人には衝撃を与え、そしてまた次も見たいと思わせる。
それは岸和田のだんじり祭りにも共通する「誘惑」。
その香りは、硝煙の発する独特の匂いを大量に含み、
それでいて祭り関係者の熱気を明らかに感じるほどのいい香りだった。

最後に

今回の祭りをもっと知りたければ、
「野一色(のいしき)」地区の関係者が作成する、
その名も『野一色』というホームページを探すことをお勧めする。
ネット検索サイトで「野一色 手力 火祭り」と指定すればよろしい。
大抵最上位に出てくるはずである。
なお、リンク許可をもらっていないので、アドレスは掲載しない。念のため。
さて、次は8月の長良川か。
どこかで夜景モード付のデジカメを手に入れないとだめだな、こりゃ。