テツモグラはいつももがいてます

はてなダイアリー「鉄道旅行とは巡ること」からの移行ブログです。鉄道を含む交通機関関連がメインだけれど実際には雑多ネタ。

SL運転の是非に「改軌問題」が絡む?

どんな問題だったのか?

6月12日(月)付(13日付だったか、いや、もっと前だったか?)中日新聞のコラム「核心」に、「SL下工弁慶号の走行問題には、北勢線の改軌問題も絡んでいる」というリポートが掲載された(6月12日の過去記事を見れば分かるんだが、中日新聞Webサイト上に「核心」を集めたカテゴリがない)。
「下工弁慶号」を巡る問題は、id:tetsumogura:20060526に一度書いており、その後どうなったのか私も気になっていたが、5月29日付で「北勢線活性化対策協議会(以降、協議会)」は「北勢線とまち育(はぐく)みを考える会(以降、「考える会」)」への管理委託を取り消す決定をしたそうだ。


「核心」によれば、この問題の背後には2つの大きな問題が潜んでいるという。一つはSLにかけた保険契約の契約内容。協議会側は「SLにかけている保険の適用除外となり、事故を起こした時の保証がない」と言う。そしてもう一つは三岐鉄道自体がやろうとしている「北勢線の改軌」。これについて三岐鉄道側は「中長期的にみて、乗客増加に対応した列車の大型化をやらねばならず、そうなると改軌は避けられない」と言っている。改軌されるなら今のSLは不要どころか邪魔になってくるのだ。

保険契約は結び直せばいいが・・・それ以前の問題。

保険契約は結び直せばいい。走行の是非は話し合えばいい。肝心なのは「改軌問題」だ。
以下の私の意見を見てもらう前に、まず、「北勢線対策室」(http://www5.ocn.ne.jp/~tetsudou/index1.htm)トップページより「北勢線活性化ワークショップ」へ飛び、「第2回(平成15年2月12日)」開催時の以下の資料をダウンロードしてほしい。なお、ウィルス汚染に対しては細心の注意を。

  • 「リニューアル計画(ワードファイル形式/renew1.doc)」
  • 三岐鉄道北勢線 輸送人員想定(エクセルファイル形式/jinninnsoutei.xls)」

私見

  • 第2回北勢線活性化ワークショップでも、三岐鉄道側は改軌について具体的な方向性を示していない。
    • 「リニューアル計画」では、三岐鉄道北勢線管理部)は「快適性の向上」として、「スピードは遅い、車内は狭い、夏は暑い」を挙げ、それぞれ改善策を出している。
      • 「スピードは遅い」については「急曲線の改良、設備及び車両の高速運転対応」
      • 「車内は狭い」については「車両の大型化及びそれに伴う改軌工事、橋梁の補強など」
      • 「夏は暑い」については「全車冷房化及び送電設備等の増強」
    • ただ、この場では三岐鉄道はどうするつもりなのか明言を避けており、「ワークショップ委員の意見を聞きながら進めて行きたい」という表現をしているに過ぎない。莫大な費用と時間がかかる改軌については、三岐鉄道もすぐ実行できる状態にはない。当然と言えば当然なんだが。
  • 第2回開催時に三岐鉄道が示した輸送人員予想より、実際の利用者数は低い。
    • 路面電車トラストの会」サイトに、2006年5月30日付中日新聞三重版からの記事が転載されている(元の記事へのリンクは無効)。これによると、平成17年度の北勢線利用者数は206万人、そのうち定期外(普通乗車券など)利用者が67万8000人いたそうだ。
    • 一方、第2回ワークショップで三岐鉄道側が示した「輸送人員予想」は、平成13・14年度の実績から平成17年度は「2,542,721人」としていた。第2回ワークショップでの予想と実際とは約48万人もの隔たりがあるが、この隔たりを作った原因は、通勤定期及び通学定期利用者の減少にある。つまり地元の人間は通勤や通学の足として使っていない。
  • 改軌にかかる費用は自治体が払うか、それとも運賃転嫁か?
    • 「改軌」をやれば車両は大型化できる。では改軌にかかる費用はいくらなのか? 用地取得費用は? 線路・架線付け替えなどの工事費用は? 一番大事なのはその費用を周辺市町村からの補助で賄うのか、それとも運賃上乗せとするのか、その明言を三岐鉄道側が避けたことにある。前者なら各自治体への負担は大きく、税金による補填をすれば、翌年から市町村税値上げということも十分あり得る。後者だと基礎運賃を上げるか加算額を上げるかにより変わり、基礎運賃を上げれば定期券利用者に、加算額を上げれば遠距離利用者に特に負担がのしかかる。そうなると利用者はバスやマイカーなどに余計に「逃げて」しまう。ど素人でも分かることなのに。それともまだ時期尚早だと考えたか? (新しく作った駅は改軌に対応できるようにしてあるらしいが。)
  • どうする?
    • まず先にやるべきは「暑さ対策」と「西桑名駅のJR・近鉄名駅一体化」だ。特に「西桑名駅」が桑名駅からあれだけ離れているのでは、名古屋や津へ出ようとすると大変な苦労を強いられる。JRホーム側に隣接する形でホームを設け、まずは乗り換え時間の短縮を目指すこと。改軌などその後からでも十分間に合う。
    • 前に言った通り、協議会は「SL」という起爆剤を下松市から借りることができた。期限は3年で、来年か再来年辺りには期限切れで返却か再契約か、それとも譲り受けるかの選択をしなければならない。「考える会」が契約違反という形には(表面上)なるが、SLを走行させた。そしたら見学客がやってきたのだ。その中には普通乗車券等できた客も多数いただろう。これは事実だ。「ニブロク」という特殊軌間を持つ「北勢線」を、なんらかの形でもっとアピールしないとお客は乗ってくれない。
    • 沿線開発も遅れている。阿下喜駅付近にショッピングモールを誘致したらどうなる?(阿下喜駅でなくてもいいんだが) 保有列車のうち、一部を改良してトロッコ列車にしたらどうだ? 阿下喜温泉の認知度も低すぎる。駅から徒歩何分かかるのだ? バスの発着時刻は? 近畿日本ツーリストもしくはJR東海ツアーズとのタイアップし、名古屋から行きは観光バス、帰りは北勢線乗車+近鉄もしくはJR名古屋駅帰着という日帰りプランも考えられる。

手はあるのに打っていない。このまま北勢線廃止か?

最後に、今回のリンク

路面電車トラストの会」Webサイトより「三岐鉄道の話題」 http://angel.ap.teacup.com/trust/260.html
いなべ市議会定例会でのいなべ市長の答弁(東京新聞Webサイトより/) http://www.tokyo-np.co.jp/00/mie/20060614/lcl_____mie_____010.shtml
北勢線対策室(再掲) http://www5.ocn.ne.jp/~tetsudou/index1.htm

追記

ホントーに行政側はあのSLをどう扱いたいんだね?
・・・と言いたいが、誤字脱字を今頃修正しているようじゃ・・・トホホ。